日刊スポーツ「編成部長」のサブロー氏(42)が未来の大砲候補を「S」の評価に位置付けた。25日に関西学生野球春季リーグを視察し、近大の4番三塁、佐藤輝明内野手(3年=仁川学院)の打撃をチェック。高校時代は無名で全国的にまだ名前は広まっておらず来年のドラフト候補だが、長距離打者の素養を備えていると評した。

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左打者でステイバック、つまり体重移動が少なく、軸足に体重を残して打てる打者は少ない。どうしても走り打ちするタイプが多くなる。だが186センチ、92キロの体形だけでなく、左足に体重が乗って、その場で回転する佐藤の打撃を見て、松井秀喜さんのようだと思った。

柔軟な左足首の使い方がパワーを生んでいる。普通は足首を回すときにつま先が立って、かかとが浮きがちになる。だが母趾(ぼし)球と内かかと部分を地面に食い込ませて、ミート時にかかとが上がりきらない。足首をねじるように蹴って地面からの反発を利用し、スイングに伝えている。大根を土から引っこ抜く時に「ズボッ」と力が生まれる感覚に近い。

昔で言う「うねり打法」。落合博満さん、松井さんも同じ足首の使い方をしていた。私も現役時代に取り組んだが、どうしてもできなかった。佐藤は足首の関節が柔らかいのだろう。プロで結果を出す選手は体の使い方がうまく、教えてなかなかできるものではない。軸足の内側から回転する、ということは腕も連動して、内側からインサイドアウトの軌道で最短距離でバットも出てくる。このスイングならプロの内角攻めも対応できるだろうし、バットに当てる感覚もある。

昨年からアマチュア選手を重点的に見る機会が増えた。個人的にランク付けもしているが、昨年なら大阪桐蔭の根尾、藤原、今年は大船渡の佐々木にSランクをつけた。タイプ、年齢も違うが佐藤もS評価。長距離バッターがいない球団事情があるなら、ドラフト1位で欲しい逸材だ。

◆うねり打法 往年のホームラン打者・田淵幸一が阪神浜中を教育する際に使用し、話題になった。軸足のかかとを起点に、下半身から上半身に徐々に回転しながら力を伝える打撃スタイル。

◆佐藤輝明(さとう・てるあき)1999年(平11)3月31日、兵庫県生まれ。仁川学院高を経て、近大へ。2年時から3季連続ベストナインに選出。今春季リーグは打率3割3分3厘、2本塁打、12打点。通算9本塁打で、リーグ記録の近大・西浦敏弘の19本超えを狙う。昨年、大学日本代表に選出。50メートル6秒と走力もあり、OBでもある糸井2世とも評される。目標とする選手はハーパー(フィリーズ)。右投げ左打ち。186センチ、92キロ。