ベテランの一振りが、チームを今季2度目の3連勝へ導いた。日本ハム田中賢介内野手(38)がロッテ10回戦(札幌ドーム)で3-4の8回2死一塁から代打で登場。今季1号となる逆転2ランを放った。自身14年ぶりの代打本塁打で、追いついては離される試合にケリをつけた。チームは4カードぶりの勝ち越しを決めて勝率5割に復帰、4位に浮上。交流戦を前にして、攻撃陣が再び息を吹き返してきた。

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ベテランの洞察力で、ワンチャンスをものにした。3-4で迎えた8回2死一塁。ベンチで出番を待っていた日本ハム田中賢が、満を持してバットを握った。今季18度目の代打での打席。1ボールからの2球目、ど真ん中に来たロッテ酒居の143キロ直球を見逃さなかった。

「1ボールになったので、思い切って真っすぐを待っていた。いい感じで振り抜けた。年々、飛距離が落ちているので、どこまで飛んでくれるか分からなかったけどね」。右翼席最前列へ突き刺す逆転2ラン。自身にとっては、サヨナラ2ランを放った05年9月28日ロッテ戦(札幌ドーム)以来、14年ぶりの代打本塁打となった。

日米通算20年目。俊足巧打の打者として日本ハム黄金期を支えたが、年齢による衰えや出場機会の減少などもあり、昨年オフ、19年シーズン限りでの引退を決断した。「30歳になった時は、やっぱり特別な感じがした。先のことを考えるようになった」。体力の衰えは、技術と経験値でカバーしてきた。

今季初のお立ち台では、瞳がうるんだ。「今年、もしかしたら(お立ち台は)ないかなと思っていたので、こうやって立てて良かったです」。涙をこらえるように「その前のイニング(の守備)で杉谷拳士がミスを犯していたので、このままだとみんなに文句を言われて、あいつがまたへこむだろうなと思い打席に立ちました。(打った瞬間は)杉谷の顔が浮かびました」と、後輩をいじる笑い話で本拠地ファンを沸かせた。

プロ人生は、残り100試合を切った。「みんなに惜しまれながら引退できるように、全力でやりたい。あと何試合、できるか分からないけれど、どのチームよりも長く野球をやっていたい」。優勝へと続く花道を思い描いた。【中島宙恵】

◆日本ハム栗山監督(田中賢に)「本当に大きな本塁打だった。ありがたかったです。積み重ねてきたものが、チームに勢いをもたらしてくれている」