かつて、甲子園で活躍した高校球児たちが、大人になって聖地で躍動した。日本ハムは8日、渡辺諒内野手(24)の5号満塁弾や、愛称「おにぎり君」こと横尾俊建内野手(26)の今季初アーチなど13安打10得点で阪神に大勝。近年のドラフト戦略の影響で、高校時代に甲子園を沸かせた選手が多数ベンチ入り。申し子たちの快打で、チームは今季3度目の3連勝、貯金を今季最多の6に伸ばした。

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5-0の7回2死満塁。甲子園のスタンドが、敵地ファンの悲鳴で揺れた。日本ハム渡辺が、バックスクリーンへ試合を決定づけるアーチを運んだからだ。「あそこまで飛んでくれて良かった。本当に気持ち良かったです」。ダイヤモンドを1周しホームを踏むと同時に、勝利を諦めた阪神ファンの手から黄色の風船が乱れ飛んだ。

7年前の夏の日を、思い出していた。東海大甲府(山梨)2年で出場した甲子園大会。2回戦の龍谷大平安(京都)戦で左翼席中段に特大の1発を放っていた。「あの時も、打った瞬間だった。よく覚えています」と感慨に浸り「高2の時に甲子園に出てなかったら、僕はここにいなかった。また、戻って来られて良かった」。13年ドラフトでは外れ外れ外れ1位で入団。今季から正二塁手として定着した。最近は不振に苦しんでいたが「調子の良い人のものを借りて験担ぎした」と、大田のソックスを借りて突破口を探していた。

8回には、日大三(東京)で計3度甲子園に出場し、春は準優勝、夏は全国制覇も経験している横尾が、代打で左翼席へ待ちに待った今季1号を放り込んだ。甲子園での本塁打は初めてで「感触は完璧」と、「おにぎり君」の愛称で親しまれる丸顔いっぱいに、笑みを浮かべた。

ドラフト会議で甲子園のスターを続々と指名する傾向もあり、“甲子園アベンジャーズ”のようなオーダーが可能になっている。この日、7回に今季初めて代打で左中間二塁打を放った中田も、その1人。大阪桐蔭(大阪)時代に甲子園で4本塁打している“リーダー”は「あいつらが活躍することで打線に厚みが増す。2人の活躍で大勝できました」。青春時代の記憶を刻む聖地で、かつての高校球児たちが生き生きと輝いた。【中島宙恵】