台湾出身のオリックス張奕(ちょう・やく)投手(25)が、プロ初先発で初勝利を挙げ、育成野手出身ではプロ野球史上初の勝ち投手となった。旭川での試合はイニングごとに雨脚が強くなったが、堂々の6回2安打1失点。お立ち台では「最高です!」と声高々に喜びを表した。

切れ味鋭い最速148キロの直球を軸に、カーブ、スライダー、チェンジアップで緩急を自在に操った。4回までは完全投球。3点リードの6回先頭の清宮に中越えの1発を浴びたが、後続はしっかり断ち切った。「緊張はしていたんですけど、自分の投球ができました。とにかく打者に集中して1球1球投げました」。

最愛の妻の故郷北海道で悲願の初勝利だ。プロ1年目の17年オフに大学時代の野球部の友人と食事にいった際、同じ店にいた女性に一目ぼれ。その後恋人となり、1歳年上の姉さん女房と昨年夏ごろに結婚した。「ちゃんと栄養とかも管理してくれている。ありがたいです」。5月2日に支配下選手登録されたことを連絡すると泣いて喜んでくれたという。「家族のためにここまで頑張ってきた。家族のおかげですね」。

昨年11月には第1子となる長男が誕生した。「落ち込んでいる時も家に帰って子どもを見て、その日の悩みとかがなくなりますね。癒やされています」。エネルギーももらっている。「子どもはあんなに成長しているのに、自分も成長しないといけないなと感じました」。育成からはい上がる原動力となった家族に贈る、感謝の1勝だ。

8日は台湾で父の日。ウイニングボールは父正昌さん(50)に贈る。「最高のプレゼントですね」。家族を思って腕を振り、白星を積み重ねる。【古財稜明】

◆張奕(ちょう・やく)1994年2月26日、台湾出身。甲子園に憧れ高校から日本へ留学。福岡第一で1年秋からレギュラー。投手と外野手を兼任した3年夏は福岡大会準V。日本経大では4年秋には本塁打王(4本)を獲得。外野手として16年に育成ドラフト1位で入団。昨年6月から本格的に投手に転向し、5月2日に支配下選手登録された。巨人陽岱鋼はいとこ。182センチ、84キロ。右投げ右打ち。