稲葉篤紀監督の勝負勘が作動した。大会初黒星を喫した前夜。菊池が首を負傷し、外崎を二塁手に充て、守備位置から決めた。さらに「丸を3番、勇人(坂本)を2番に。巨人でいつもやっている方が2人にとっていいのでは」と、ほぼ打線を組み終えて、床に就いた。

だが一夜明けた昼ごろ、思い直した。メジャー通算40勝左腕ラミレスに対し「左打者はあのシュートは打ちづらいだろう。浅村が良かったので3番に入れた方が、つながるのでは。私の中でひらめいた」。12日の米国戦で3安打3打点を挙げた好調な打者を坂本勇と4番鈴木の接着剤に。5番も、同戦で3打席連続出塁の外崎を9番から一気に昇格させた。3番が定位置だった6番近藤の適時打を含め、初回の4安打中3安打は新打順の選手から生まれた。シーズン中に1度もない9番で丸もしぶとかった。

不振にあえぐ強打者を、信じ抜いた。試合前練習のフリー打撃を終え、室内にこもった坂本勇に助言も添えた。「彼の練習する姿を見ていても自分でやりながらしっかり調整してくれていた。必ず大事なところで生きてくる。その努力は野球の神様が見ていてくれているという思いが強かった」。思いは実った。

「このチームで試合ができるのも韓国戦、決勝と2試合。悔いのないよう全員で結束力を持って戦っていく」。世界一へ智力と死力を尽くす。【広重竜太郎】