グラウンドに漂う一発逆転の香りを、しっかり嗅ぎ取った。楽天浅村栄斗内野手(29)がヒーローの座をひと振りでつかんだ。

1点を追う8回2死一塁。ソフトバンク・モイネロの初球カーブをフルスイング。「反応です。甘い球だけを意識した」とおいしい匂いを逃さず、決勝逆転2ランをたたき込んだ。「場面もそうだし、今年の中で一番いい感触で打てた。打った瞬間にうれしかった」とミートから5秒間バットを持ったままドヤ顔で歩いた。

戦場でしか嗅げない匂いがある。7月12日ソフトバンク戦以来、18試合ぶりに二塁手でスタメン出場。チーム状況やコンディションなどを考慮され、DH出場が続いたが展開の波に乗り切れなかった。「裏で準備する時間も多い。チャンス、ピンチを肌でグラウンドに立って味わわないとなかなか入っていきづらい」。嗅覚が鈍った。

ただ“スイートスポット”に身を置けば、すぐに感覚は戻った。昨季ゴールデングラブ賞を獲得した技術は健在。無失策で難なくさばいた。「守備について試合に入った方が、自分の中ではいい流れ、いいリズムでできるなと改めて思った」とルーティンにも似た時の流れを再確認した。

三木監督も「ファンの方が望む緊迫した場面で結果を出せるのはプロだなと思う」と称賛。首位ソフトバンクへ1差。6連戦初戦をもぎとる1発の価値は計り知れない。「まだまだ試合はありますが、首位攻防戦で負けられない試合が今週は続く。初戦をとれて明日からいい流れでできる」と浅村。シーズンの行方を左右する勝負どころの匂いも嗅ぎ取った。【桑原幹久】