10年前、東日本大震災・発生時刻の午後2時46分から遅れること1分。9回裏、2死一塁からTDKの小木田敦也投手(22=角館)が最後の打者を二ゴロに打ち取ると、選手たちはベンチから笑顔で飛び出した。震災10年の3・11、同じ東北のチームが被災地に1勝を届けた。佐藤康典監督(50)は「巡り合わせがあるのかな」と価値ある1勝に感慨深く話した。

東北の力がチームに宿った。試合前、声出しを担当した三河聖央外野手(23=国際武道大)はチームメートの前で堂々と宣言した。「3月11日ということで、東北にとって、この1日が一番記憶に残る1日として。東北の皆さまに、勝っていい知らせができるようにしよう」。その言葉通り、4回2死一、二塁から「狙っていた」という真っすぐを振り抜き、中越え適時打。自らのバットで先制打をたたき出し、勝利を引き寄せた。三河は「いい知らせを届けたかった。打った瞬間はホッとしました」と笑顔を見せた。

試合前には、三菱自動車岡崎とTDKのスタッフ、選手たちがそれぞれのベンチ前に整列。午後0時17分から1分間、黙とうで犠牲者に祈りをささげた。三河は「自分たちは、会社の人や東北に元気を与えられるようにプレーをするだけ。ひたむきにやってきたつもりです」と胸を張った。

震災から10年。TDKの選手たちは、これからも東北の魂を胸に戦い続ける。