7回、代打川端の打球が右前に抜けるのを見届けたヤクルト田口麗斗投手(25)は、右手を広島の夜空に突き上げた。同点の局面を任せてベンチに下がっていた。勝ち越しだ。巨人から移籍後、先発4戦目でつかんだ白星。「チームも変わってますし、特別な1勝だと思う。まして地元、学生時代をずっと過ごした場所で初勝利を挙げられるとは思ってなかった」。白い歯がこぼれた。

好投手森下との投げ合いを制した。「1点を取るのにすごく苦労する投手。タフな試合になると思った」と集中。だが4回に四球から先取点を与えてしまった。これ以上はやれない。6回2死二塁で向かうは4番鈴木誠。3球で追い込み、外角直球に空を切らせるとガッツポーズ締め。自分にできる最大限で流れを引き寄せ、託した。

開幕ローテ入りも、なかなか援護に恵まれなかった。3日の古巣巨人戦は7回無失点で勝敗付かず。11日の中日戦は6回2失点で黒星を背負った。それでもムードメーカーは常に明るく振る舞う。高津監督は「いつも点を取ってあげられなくて申し訳なかった。よく投げ抜いてくれた。丁寧なところと全力なところと、らしい投球だった」とねぎらった。

チームの連敗を2で止め、借金生活逆戻りを阻止。新型コロナウイルス陽性と判定された西田がこの日から1軍復帰し、濃厚接触者だった川端が決勝打と、戦力も戻ってきた。田口は「一番いい投手から勝つことができている。チーム自体も、これから上昇気流に乗るのかなと思うので、よかったです」。再び3位に浮上した。【鎌田良美】

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