決勝弾のサンズがMVPなら、逆転勝ちの隠れMVPは熊谷敬宥内野手(25)が見せた“神走塁”だろう。1点を追う7回2死から四球出塁した原口の代走で登場。「あの場面で、自分がしっかりやれることをやるだけだと思っていた」。1番近本の打席で2度けん制されたが、初球に二盗を決めた。今季初登板のロドリゲスだったが、癖が分かっていたのか。11日の中日戦でも代走で出場した7回、初球の二盗成功から執念ドローを演出。バッテリーも警戒していたはずだが、あっさり包囲網を破った。

そして近本の中前適時打で同点の生還。好投のロドリゲスを降板させ、矢野監督は「1点で同点っていう形やけど、それ以上のいけるっていう気持ちにさせてくれたものだったんで」と、サンズの決勝弾につながる攻撃だったと評価した。

2戦続けて試合が動く7回の代走で起用され、どちらも初球に盗塁を決めた。矢野監督も「いい準備ができているのと、勇気もいるし」とほめた。今季5個目の盗塁は中野に並ぶチーム2位。成功率100%だ。

4年目の今季は、2軍キャンプスタートから開幕1軍を勝ち取った。内野ならどこでも守れるのが売りだが、今季初出場は1軍では初体験の外野だった。開幕3戦目の3月28日ヤクルト戦の8回から右翼の守備固めで出場し、青木の大飛球を好捕。そこから内、外野の守備固め&代走のスペシャリストとして、首位を走るチームに欠かせない戦力となっている。

立大では4年次に主将を務め、春のリーグ戦では盗塁王を獲得し、大学日本一にも輝いた。仙台育英時代の同学年、ソフトバンク上林とよく電話で話をしたという。先にプロの世界でもがく親友の話を聞き、自分もプロの舞台で輝きたいと背中を押してもらった。

今季1軍では22試合で1打席しか立っていないこともあり、この日は午後1時から2軍オリックス戦(オセアンBS)に7番右翼で出場してからの親子ゲーム。長い1日となったが、俊足イケメンが存在価値を虎党にしっかり見せつけた。【石橋隆雄】

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