戦線復帰の喜びを乗せた。ロッテのレオネス・マーティン外野手(33)は1回2死一塁、1ボールから浮いたスライダーをたたいた。復帰後初スイングが右中間フェンス直撃の先制二塁打に。これが決勝点になった。「興奮しました。ようやくこの球場に戻ってきた。勝利に貢献できたのが一番うれしい」と笑った。

絶望から舞い戻った。9月19日、札幌で自打球を右足甲に当てた。診察で骨が折れていると分かった。「お医者さんに言われた時、今年の中で最悪の3、4分でした。去年のことを思い出して」。チームトップの25発を打った昨季も10月後半に負傷離脱。2位争いとCSに出場できなかった。

今回も直後は痛みがひどく、ペナントレース中の復帰は微妙なところだった。5日後、少し歩けるようになった。「ちょっといけるんじゃないかと、希望を持てるようになった」。1週間がたったころ、朝目覚めたら痛みが軽減していた。そのまま打撃練習を再開。患部はまだ、折れている。気力がバットを振らせた。

不在の間、1軍ではナインが自身の背番号「79」を帽子に入れたり、リストバントを着けて戦ってくれた。「17年間、キューバ、米国、日本でプレーしているが、こんなに素晴らしいチームメートを持ったことがない。彼らのために何ができるか」。1日でも早く戻りたい。背中を押された。

DHではあるが、いきなり4番でのスタメン復帰。コロナ禍で来日が遅れた夫人と4人の子どもが観戦に来ていた。11歳の長女と一番下の1歳の男の子は、パパのプレーを初めて生で見た。お立ち台で拍手を一身に受け、涙ぐみながら「100%、優勝できます」と言った父の姿は、幼心に深く刻まれたに違いない。【鎌田良美】

▽ロッテ井口監督(マーティン復帰で2連勝)「マーティンの勝ちたいという気持ちが1打席目に出た。(今後も)DHです。打線に厚みが出て相手も嫌でしょうし、つながりが出てくると思います」