もう、過ぎ去った一戦を悔やんでいる暇はない。阪神大山悠輔内野手(26)は痛い敗戦の直後、厳しい表情を保ったまま、強い足取りで神宮球場を後にした。

「前を向いてやっていくしかない。反省するところはしっかり反省して、また明日から勝ちに向かってチーム一丸となってやっていきたいと思います」

振り絞った言葉の節々から、第2ラウンドへの覚悟がにじみ出た。

首位攻防3連戦の初戦、一時は反撃ムードを高めた。2点を追う4回2死、フルカウント。無安打投球を続けていた20歳奥川の外角高め149キロ直球を強く押し返した。

「しっかり打席の中で攻めていった結果がホームランになって良かった」

3ボールとなっても四球で良しとせず、直球2球を空振り、ファウルと積極的に振り抜いた末の21号ソロ。1点差に迫る1発でナインの士気を高めた。

前日7日DeNA戦でも20号左越え2ランを放っており、2戦連続アーチ。ここ4試合で3本目の1発だ。10月の月間成績は現在、7試合で打率3割3分3厘、4本塁打、7打点とハイアベレージを保っている。

これで今季70打点。球団では14~16年のマウロ・ゴメス以来、生え抜きの日本人右打者では03~05年の今岡誠以来となる3年連続70打点をクリアした。勝負の季節に状態を上げているが、なかなか勝利につながらない事実がもどかしい。

主将に就任して1年目。開幕前から一貫して言葉にしてきた。

「とにかく勝ちたい。勝てれば何でもいい」

今こそチームの先頭に立ち、信念を全身で体現し続けるタイミングだ。

この日、自力優勝の可能性が消滅した。首位ヤクルトとのゲーム差は3に開いた。16年ぶりのV奪回へ、窮地に追い込まれて迎える次戦。今まで以上に、主将の、4番の反発力に頼りたくなる。【佐井陽介】