パ・リーグはオリックスとロッテの白熱の優勝争いが続くが、球界の名物オーナーで知られるオリックス宮内義彦オーナー（86）も、25年ぶりの“そのとき”を心待ちにしている。95、96年の連覇のあと、ときには厳しく、不変の愛情を持ってチームを見守ってきた。折々のオーナー語録を振り返る第6回は2008年。この年も激震がチームを襲った。シーズン途中でコリンズ監督が電撃辞任。だがチームを引き継いだ大石監督代行（途中で監督就任）のもと、チームは9年ぶりAクラス入り。また清原和博という球界の大看板がユニホームを脱いだ。激動のシーズンを、宮内オーナーは見届け、愛情とユーモアでチームを叱咤（しった）した。
【2008年】▽1月4日 ハワイ自主トレに出発する清原に「彼が復活すれば、プロ野球の一つの歴史になる。オーナーというより1ファンとして頑張ってほしいと思っている。昨年は（左膝痛で）本当に肉体的に大変だったと思う。だが精神的にへこたれなかったのは立派だ」とエールを送った。チームには「いい補強が出来ていると思うし、投手陣に若手が出てきている。優勝争い？ 当然、当然」と期待をかけた。
▽同23日 19日に急死したオリックス雑賀社長（享年62）の通夜が営まれ、所用で参列できなかったオーナーは「彼は野球が好きでチームを作って、先発の私がノックアウトされたらリリーフ。スポーツマンでした。何十年の付き合いですから、非常にショックを受けております」と胸の内を吐露した。
▽2月16日 春季宮古島キャンプを視察し、契約でいったん合意したパウエルがソフトバンクと契約したことに怒りの声明。「契約が両方正しいなら先に結んだ方に優先権があるのは当たり前の話。プロセスが分かればはっきりすること。後は法律専門家の意見に従います」とコメント。元東京高等検察庁検事長でもある根来コミッショナー代行なら、法律的観点からもオリックスの契約の正当性を認めるはずと重圧をかけた。またチーム練習の合間に2度もブルペン入りし「（自分の方が）パウエルよりいいよ」と皮肉も忘れず。
▽4月20日 ロッテに4安打の完封負け。快勝した前日に続き観戦し「2日間、喜ばせてもらおうと思ったけどダメでしたね。また今度」と肩を落とした。
▽5月21日 コリンズ監督が電撃辞任。「監督からチーム成績低迷の責任をとって辞任したいと突然の申し出があり、強く慰留しましたが、本人の意志が固く、やむなくこれを受理することにいたしました。ペナントレースは交流戦に突入したばかりで、まだ3分の2残っており、現有スタッフによる指揮でクライマックスシリーズ進出を目指して戦ってまいります」とコメントを発表。
▽同25日 退任したコリンズ監督からチームを引き継いだ大石監督代行の初勝利を見届け「大石君もなかなか勝てない気分になってただろうし、本当にいい1勝。私も見に来て良かった。今日みたいなチームは強いなあ」とごきげんだった。
▽6月3日 球団の通算4500勝という節目の試合に立ち会い「そら、大変なこと。（初勝利は）昭和11年、僕が1歳の年だからね。子どものころから見ていた阪急の1勝も入っている。プロ野球で最も歴史あるチームの末裔（まつえい）。先人の大変な苦労もあったでしょう。次は5000勝に向かって欲しい」とエールを送った。
▽7月30日 一時は11あった借金を3まで減らした大石監督代行に「よくやっていると思う。素人目に見ても」と話した。来季については「それは（自分ではなく）球団が決めることだから」と話すにとどめた。
▽8月2日 大石監督代行（49）が監督に就任し、来季も指揮を執ることが決定。「チームはクライマックスシリーズをねらえる状況にあり、さらに一丸となって戦ってもらうためにも、後半戦、および来シーズンについて大石監督代行に正式な監督就任をお願いし、快諾いただいた」とコメントした。
▽9月7日 08年限りで引退を表明した清原に「ベンチにいても存在感があるし、よくやってくれている。（クライマックスシリーズも）監督も期待していると思うよ」と話した。チームの快進撃には「どんぐりの中から抜け出ただけ、底力が出てきた」と喜んだ。
▽同17日 CSマジックを点灯させたソフトバンク戦を観戦し「快勝ですよ。（CSマジックは）ついた方がいいですよ。こんなに燃えてできるのはいいこと。いつもなら9月でシーズン終わってますね」と喜んだ。
▽10月20日 クライマックスシリーズ出場でシーズン終了報告の席上、大石監督に「日本の某球団やヤンキースのようにお金を出したチームが勝てるのか。ぼくはレイズを見習いたい。ヨソから取ってくるのは違う」と力説した。またチームを9年ぶりAクラスに導いた指揮官には「日本シリーズで優勝したら100点ですが、85点。長くやっていただきたい」と、来季次第で長期政権も示唆した。
