誠也塾開講-。広島鈴木誠也外野手(27)が5日、宇草孔基外野手(24)とともにマツダスタジアム隣接の屋内練習場で合同トレを行った。MLBのロックアウトにより、米球団との移籍交渉が止まっているものの、本拠地で自主トレを継続している。この日は2人で約40分、マシン打撃からトス打撃、送球練習。自身の調整であり、成長を期待する後輩へ個人レッスンでもあった。

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静かな屋内練習場に40分間、打球音と鈴木誠の声が響いた。宇草と姿を見せると、交互にマシン打撃。身ぶり手ぶりで指導すると、トス打撃では後輩を打席に立たせて投手を務めた。緩急つけた投球で1球1球、スイングの体勢や軌道をチェック。声をかけながら修正を促し、そして褒めた。球拾いの時間も無駄にせず、いい例と悪い例を示しながら指導。自分の感覚ではなく、自分の引き出しから、宇草の体の使い方や打法、傾向に合ったアドバイスを送った。

「性格的に慌てる癖がある。人生において、やっぱり慌てるのは何もかも良くない。時間に追われて何かをすると、何かひとつ忘れたりすることがあるじゃないですか。それはバッティングも守備も一緒」

宇草が11月の「抜釘術(右腓骨=ひこつ=固定プレート除去)」からリハビリを終えたことで、合同自主トレが実現した。同じ尾形スカウトから見いだされてプロ入り。鈴木誠も「足は速いし、パワーもある」と、秘めた能力を認める。ただ殻を破り、レギュラーをつかむかどうかは本人次第。後輩に伝えようとしているのは、技術論だけではない。日々の取り組み方や姿勢、思考法まで多岐にわたる。練習が終わってからも、屋内練習場を出るまで意見を交換し続けた。

2人だけの濃密な40分は、後継を期待する思いもあったに違いない。「来年はいい選手がいっぱい入ってくる、特に外野は。若い選手が頑張っている姿を見るのは、僕にとってもプラスです。たまには誰かとやって刺激し合いながらやるのもいい」。今後も開講されるであろう誠也塾は後輩のためだけでなく、自分のためでもある。米球界との移籍交渉が注目される中、姿を隠さず連日のようにトレーニングを行う姿もまた、残された後輩たちに無言のメッセージになっているかもしれない。【前原淳】

〇…広島鈴木誠は米大リーグ公式球を使ったキャッチボールも行っている。日本の公式球よりも滑りやすく、打球が飛びにくいとされるが「そんなに変わらない。ちょっと滑るかなくらい」と気にする様子はない。WBCや東京五輪などの国際大会を経験しており「もともと飛ばすタイプじゃないし、(送球も)適当です。変に意識しすぎると逆におかしくなる。意識しない方がいい」と冷静に対応していく。

▽広島宇草 自分の中で大切にしたいことはたくさんあります。いつも誠也さんは“全部つながっている”と考えている。一緒に練習したり、会話していく中で聞きたいことが出てくる。すごく引き出しが多い。メジャーに行っても僕は聞きます。