社会人の経験を生かし、頂点へ。そして、人格を育てる監督に-。昨秋東京新大学リーグ覇者の流通経大は新チームから、社会人野球の東芝でもプレーした同大OBの高野重弘新監督(57)が指揮を執る。

18日は就任1年目の目標に、同大初の全国制覇を挙げた。「選手たちにも就任したときに宣言したんです。本気で日本一を目指そうよと。そのために、意識と行動を変えないといけません」と力を込めた。

現役引退後は長らくサラリーマンとして勤務。その間も土日はコーチとして、知り合いのチームを手伝っていた。昨年、クラブチームのYBC柏で監督を務めた後、11月に中道守監督(50)の後を継いだ。

人生2度目の監督シーズンを迎えるが、不安はない。「社会人の組織と野球の組織、これは同じなんです。利益を目指すものと、勝利を目指すもの。置き換えれば答えが見えてきます」と冷静に話した。

まずは選手に責任感を与えた。新チームでは、組織において上司の役割の一部を部下に分け与えることをいう、「権限移譲」を行っている。選手に「気付き」の機会を与えるためだ。

1つに、新設された役職「グラウンド責任者」がある。たとえば、翌日の天気で降雨が予報されているとき、高野監督は選手に対してあえて何も言わない。「選手自身で『グラウンドにシートをかけようか』と、考えて行動してほしいんです。単純なことですけど、自主的に考えて、失敗する。その繰り返しが成長につながると思うんです」と説明した。

練習面では週に1度のメンタルトレーニングを導入。外部のメンタル講師を呼び、座学を中心に行っている。野球で成果を出す狙いの他に、人格形成の効果を期待する。「うちは伝統として、人としての育成に力を入れています。前任の中道監督は、礼儀と寮生活の過ごし方を大切にされていました。そこを引き継ぎつつ、自分なりの新しさとしていろんなことを試しています」と話した。

取り組みを始めて4カ月、最上級生を中心に、目の色が変わってきた。新チームで主将を務める清水拓海内野手(3年=盈進)は、「監督さんは就任してすぐ『日本一』と言われました。選手も日本一を目指します」と力を込めた。創部初の栄冠へ、新生・流通経大が頂点を狙う。【阿部泰斉】