<東都大学野球:日大7-4駒大>◇第2週第1日◇12日◇神宮

大分での開幕カードは2連敗だった日大が、今季初白星を飾った。今秋ドラフト候補の6番・中尾勇介外野手(4年=山梨学院)が、サヨナラ3ランで試合を決めた。

足の男がバットでみせた。4-4で迎えた9回2死一、二塁。中尾勇は相手右腕エーアンが投じた低めスライダーを左翼席に運んだ。「(ホームインの瞬間は)記憶がないです。本塁打という最高の形になって自分でもびっくりしています」。神宮での1発も、サヨナラの本塁打も人生初だった。

片岡昭吾監督(44)の一声が追い風となった。本塁打を放った打席、初球のストライクをあえなく見逃した。気持ちが入り過ぎていた。すかさずタイムがかけられ、言葉をもらった。「トスバッティングの延長だ」。中尾勇は気持ちを整理した。「力んでた部分がありました。声をかけてもらって『(野手の)間を抜けばいいんだ』と、軽い気持ちになりました」。切り替え、そして出た1発だった。

50メートル5秒9の俊足の持ち主だ。この日の右中間への安打も、快足を飛ばして悠々と二塁を陥れた。その足を生かした守備も魅力で、チームメートは「守備範囲がエグいです」と口をそろえる。視察した中日の正津英志スカウト(49)も「能力の高さがありますよね。(足と守備範囲は)それがもう、彼の持ち味でしょう」と評価する。

中学時代の運動会、リレーで伝説を残した。「トラック1周のコース、(バトンを受け取った際に)前の走者と半周差があったんです。それを抜かして1位でゴールしたことがあります」。類いまれなる快速特急が、戦国東都からプロを目指す。【阿部泰斉】