オリックスは15日、能見篤史投手兼任コーチ(43)の今季限りでの現役引退を発表した。16日に京セラドーム大阪で会見を開く。プロ入り以来16年間を阪神で過ごし、5度の2桁勝利などエースとして活躍。21年にオリックスに移籍し、コーチと選手の二刀流で25年ぶりのリーグ優勝に貢献した。球団は104勝を挙げた名サウスポーの指導力を高く評価。来季もコーチ契約のオファーをしている。

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スラッとしたシルエットが、帽子を脱ぐ。43歳のオリックス能見兼任コーチは白髪が目立つ。「遺伝なんでね。メッシュみたいに生えてくれたらいいんですけどね~」と笑ったことがある。阪神在籍時は真っ黒に染めていたが、オリックス移籍後は「髪を染めている選手が多いので、僕の白髪もあまり目立たない」と自然体。家族から「そろそろ髪を染めた方がいいんじゃない?」と促されると、黒く染める程度だ。

「髪の色もね、チームの雰囲気を表していると思うんです」

エース山本は左前髪に金色のメッシュを入れ、山岡は金髪。山崎福は茶髪で、山崎颯は金髪が伸びきって黒髪に戻り、宮城は丸刈りにしたこともある。「若い選手が多くて、伸びしろしかない」。選手である一方でコーチも兼任。芽を育て、開花する喜びも知った。

先発登板して黒星が続く投手には「そのままで大丈夫だよ」と励まし、勝ったタイミングで「いつも、あれぐらいできると信じてる」と自信を深めさせる。プロ入り初めて痛打を浴びた投手には「誰も最初から成功なんていない。これからが大事になるんだから」。個々の特徴を見る。自身の経験は押しつけない。

今季の1軍は投手コーチ3人制。出場選手登録を外れているときは、ベンチ入りできない。「裏でチェックしてますよ」と選手サロンで映像を見てメモを取る。試合後は首脳陣のミーティングに参加し、自身の調整もあるため、帰路につくのは毎日遅い。「僕は(選手と)同じ目線。寄り添うことが多いですね」と抜群のコーチングで潜在能力を開花させている。

「2人分」を担った。出場選手登録されていない期間も、常に1軍に同行。コーチ業も行うため、2軍戦などで調整登板は行えない。実戦感覚は鈍るが「試合勘ですか? ブルペンにも入りますし、打撃投手もするので」とあっさり。阪神でエースを務めた左腕は、自らのことを後回しにし、有望株の育成に貢献した。【オリックス担当 真柴健】

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