17年連続「V逸」が決まった夜、阪神佐藤輝明内野手(23)が意地を示した。両軍無得点の2回2死。戸郷の低め135キロフォークをすくい上げた。「フォークがいいピッチャーなので、その球を捉えられたのでよかったです」。右翼席に着弾する先制19号ソロ。相手の宝刀を打ち砕いてこそ主砲だ。

完璧な感触を手に残し、ベンチで矢野監督からたこ焼き風の「虎メダル」を首にかけられた。チーム内で流行中の井上ヘッドコーチが現役時代に行っていた、両手を頭上斜め上に挙げる「ピンキーガッツ」も披露。「しっかり芯で捉えることができたので、ホームランになって良かったです。ピンキーガッツ!」。今季限りでの引退を表明した糸井が同行した東京遠征。大好きな先輩の熱視線に応えた男は、全身を使ってナインを盛り上げた。

これで5試合連続安打と状態は悪くないが、本塁打は久々だ。8月20日巨人戦以来、22試合90打席ぶり。自身今季最長ブランクを乗り越え、20発へ王手をかけた。今季は、プロ1年目の昨季から三振が大幅に減少し、四球はほぼ倍増。打率も上がっている。キャンプから確実性を重視してきた成果も出た一方、本塁打数は伸び悩んだ。

残り7試合。「残りも(本塁打が)出るように頑張っていきたいと思います」。背番号8がスパートを誓えば、矢野監督も「そうしてほしい」と期待。新人から2年連続20本塁打以上なら69、70年の田淵幸一以来、球団史上2人目となる。右肩上がりのフィニッシュへ突き進むだけだ。

「いやもう、それは目の前の試合を1試合、1試合ね、勝ちにいきます」

優勝の可能性が完全消滅し、CSへの思いを問われると必死に前を向いた。下克上のチャンスは残されている。歩みを止めるわけにはいかない。【中野椋】

▼佐藤輝が8月20日巨人戦以来、90打席ぶりの本塁打を放った。今季最長ブランクとなる89打席ノーアーチ。自身最長ブランクは21年8月20日中日戦第1打席から10月23日広島戦第3打席にかけての91打席ノーアーチ。

○…岩貞が1回を無失点に抑えた。1点ビハインドの7回に登板。巨人重信を二ゴロに仕留めると、吉川も148キロの直球で遊ゴロとした。坂本には中前打を打たれたが、最後は丸を149キロの外角直球で空振り三振。得点を許さなかった。「勝ちたい!それだけです」と力強く振り返った。この日で今季の伝統の一戦は終了。左腕は計8試合に登板し、無失点と役割を果たした。