前週に勝ち点4で全日程を終了した中大は、寒空の下、神宮球場のスタンドで戦況を見守った。

青学大が駒大に敗れ、国学院大も亜大に敗れると5季ぶりの優勝が決まる。その時を、ただじっと待ち望んだが思いは届かなかった。2位でシーズンを終え、静かに神宮球場を後にした。

ヤクルトにドラフト5位指名された北村恵吾内野手(4年=近江)は「学生ラストシーズンだったのですが、最後まで後悔なく終えることができたシーズンでした」と、充実感に満ちた表情を見せた。

下克上に挑戦した秋だった。春は三つどもえの順位決定戦に臨み最下位に。順位決定戦で青学大に敗れた直後、外野に集まった選手たちの目からは涙がこぼれた。「2度とこんな思いはしたくない」。思いはひとつだった。

入れ替え戦を勝ち抜き1部残留を決めると、北村は秋に向け「何かを変えないとダメだ」と選手たちを鼓舞した。練習から意識を変え「この1球を逃すと、2部に行く」とノック、バッティングと1球に対する緊張感が変わった。練習ではピンと張り詰めた空気が流れ集中力が増した。今秋は無駄なエラーが減り、ピンチには元気な声。最後まであきらめない。粘りが生まれ接戦をものにした。

今年、チームが掲げたテーマは「日本一」。春、最下位になってもその思いは変えなかった。北村は「入れ替え戦を経験したからこそみんな強くなったし、結束力は高まった」と振り返った。悔しさだけが残った春。秋は、優勝争いを繰り広げ充実感があふれた。

春とは違う景色を見た秋。清水達也監督は「今年の春の入れ替え戦に回った悔しさ、秋の優勝を逃した悔しさをバネにして、来シーズンは1つ1つ価値を積み重ねて優勝を目指して戦います」と話した。来年は、日本一へ。ただ上だけを見つめ、これからも突き進む。【保坂淑子】