中堅の意地を見せるシーズンだ。阪神糸原健斗内野手(30)が、危機感とともに23年のスタートを切った。

「僕自身、今年は厳しい立場になるかもしれない」。プロ7年目。岡田新体制ではレギュラーを確約されていない。「でも、しっかり自分のやることはできるように、チームに貢献できるように」。悲壮感を胸に、フォア・ザ・チームに徹する構えだ。

昨季主戦場とした二塁に中野がコンバートされ、三塁は佐藤輝で固定。遊撃は小幡、木浪の一騎打ちで、一塁には大山が入る。指揮官も、10月下旬に糸原の打撃フォームについて触れて以降は、名前を挙げていない。定位置争いは狭き門。ただ、男の目は死んでいない。

「どこを任されてもできるように、準備だけはしっかりしていけたら。毎年競争なので、そこで勝てるように準備したい」

昨季は基本的に同じグラブで二、三塁を守っていたが、今年は新たに三塁用グラブを発注済み。強い打球にも負けない仕様の相棒を用意した。「どこを任されても」の言葉は紛れもない本音だ。

甲子園を拠点に行う自主トレではバットを振り込む日々。例年よりも「打つ量を増やしつつやっています」。過去6年で規定打席到達4度のバットマンに、まだ「衰え」の2文字は早い。「2月に入ったらしっかりアピールできるように」と力強い。

超人も活躍を待っている。球団スペシャルアンバサダー(SA)に就任した糸井氏が自主トレを視察に訪れ、激励を受けたという。兄貴分として慕っていた先輩は昼食の差し入れに加え、打撃投手も買って出てくれた。「いろいろ教えてもらうこともそこでできた。感謝の気持ちは結果で返すしかできない」。並々ならぬ覚悟で定位置争いに待ったをかける。【中野椋】

○…阪神糸井SAが糸原の逆襲に期待した。現役時代は「糸糸コンビ」で沸かせ、昨年9月の糸井氏の引退会見では佐藤輝、坂本とサプライズで花束を贈呈してくれた愛すべき後輩。さらに引退試合の広島戦(甲子園)では、糸井氏が使っていたSMAPの「SHAKE」で登場して3安打を放つなど花道を彩ってくれた。糸原が置かれている厳しい立場を踏まえ「ケントは気持ちの熱い男ですからね。やればできる! 頑張ってほしい」と力を込めた。

【関連記事】阪神ニュース一覧