社会人野球のトヨタ自動車に入社予定の慶大・増居翔太投手(22)が16日、トヨタスポーツセンターで行われた全体練習で、初めて捕手を座らせて42球のブルペン投球を行った。

一昨年までバッテリーを組んでいた慶大の先輩、福井章吾捕手(23)のミットから、パチンと大きな音が響いた。力強い真っすぐと、得意なカーブ。スライダー、チェンジアップと感触を確かめるように、次々と投げ込んだ。「真っすぐのコース、ラインをしっかりと意識して投げられた。初めての割には良かったかなと。思ったよりも投げられたかな」と安心した表情を見せた。

1月11日から練習に参加。「今一番取り組んでいるのが全体のバランスを意識すること。制球力、再現性のある投球をしたいと思っています」。地道に体重移動の反復と頭が前に突っ込まないフォームを意識。わずか1カ月で、手応えを実感した。

「今日はいいことある」。この日は朝からいい予感がしていた。1月11日に入寮して約1カ月。朝は自炊で初めて料理にチャレンジ。いつものメニューは、ご飯、卵焼き、ベーコン、納豆、ヨーグルト。「卵焼きがうまく巻けると今日はいいことがある! と信じているんです」。この日の朝は、いつになくキレイに巻けた卵焼きが完成。好投の予感は的中した。

1年ぶりに増居の球を受けた福井は「大学の時よりもボールの強さ、精度も上がっていると感じました。これから、シーズンに入って打者と対峙(たいじ)してどう投げていくのか。社会人でもしっかり抑えられる。これからは、バッテリーを組んで戦っていきたいですね」と、後輩の成長に声を弾ませた。

昨秋は、プロ志望届を提出したが指名漏れ。「ある程度、実力や自分の立ち位置を客観的に見られていたので。感情的になることはほとんどありませんでした」と、すぐに社会人入りに目を向けた。「今は試合にも投げていないので、自分がどれくらい投げられるか現在地がわからない。今は、昨日よりも今日、と焦らずに先を見ず。足元を見てちょっとずつ進んでいければ」と、しっかり足元を見据える。

先発として試合を作り、粘り強く勝利につなげるスタイルは変わらない。「まずは先発の柱を目指して。少しずつ先のビジョンも見えてくると思います」。昨秋の日本選手権を制したトヨタ自動車で、増居はさらなる成長を誓い、好スタートを切った。【保坂淑子】