西武のルーキー、青山美夏人投手(22)にDeNA3連戦(横浜)での登板機会はなかった。「また次回に」と球場を後にした。

神奈川・横須賀市出身で、幼少期は当時の横浜ベイスターズの2軍組織、湘南シーレックスの試合を両親に連れられて横須賀スタジアムでたまに観戦していたという。その流れで、横浜スタジアムにも。

「自分、ハマスタでは1度しか投げたことがないです。客として来たイメージしかないですね」

1度だけマウンドを踏んだのは横浜隼人高校時代になる。「引退試合の予備日で横浜スタジアムを取ってくれていて、そこで投げました」。

夏の大会が始まる直前、強豪の高崎健康福祉大高崎(群馬)との練習試合で投げたという。

青山が言う、高校野球の「引退試合」は、プロ野球ファンにはあまり知られていないフレーズかもしれない。

3年生の野球部員が多い高校は、3年生全員が最後の大会でベンチ入りできるとは限らない。大会前に選手として「引退」となる3年生もいる。

横浜隼人は神奈川県有数の部員数を誇り、似た環境の横浜商大高との「引退試合」を6月下旬に行うようになり、約25年になる。ここ10数年で横浜スタジアムで行っている。

横浜隼人の水谷哲也監督は「3年間、ベンチに入れなかった選手だっている。オレは野球をやってきたんだ、という環境を最後には作ってやりたいんです」と舞台を用意してきた。引退試合では、夏のベンチメンバー外になる可能性がある選手を中心に、熱戦が繰り広げられ、最後は全員で夜空へ帽子を投げる。

エースだった青山は引退試合ではスタンド応援組に回り、仲間たちへ声を上げ続けた。「同期は50人近くいました。みんなとこれまで一緒に頑張ってきて、(ベンチに入れない)そいつらのためにも頑張ろうって」。最後の夏から5年が過ぎ、硬式野球を続けている仲間もほんの数人に。彼らのためにも、プロの世界で腕を振る。【金子真仁】

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