阪神前川右京外野手(20)がプロ初3番で初マルチ安打と起用に応えた。

打線テコ入れとして大抜てき。昼のミーティングで告げられた。「ほんまにびっくりしました」。高卒2年目の先発クリーンアップは98年の浜中以来も、堂々デビューだった。初回1死一塁。日米通算193勝の楽天田中将の低め変化球を右前に運んだ。

「とてもすごい投手から打てたので、素直にうれしい。いい結果でよかった」

3回1死二塁では二塁への内野安打で出塁。初のマルチ安打も放った。「だいぶ集中して入っていけたかなと思います」と初めてづくしも手応え十分だ。

前川は小さい頃、「おにいちゃんにはぜったいまけへんからな」と兄夏輝さん(21)に言い続けた。「野球で実力が上だった兄に負けたくない一心でした」。ともに野球に打ち込んだが、ある日、兄から愛のムチを浴びた。「『そんな野球の感じでいいんか?』って。そこからスイッチが入った」。すぐに、硬式野球チーム「津ボーイズ」に入り、メキメキと成長。名門智弁学園に門をたたいた。大役を託されても、持ち前の負けん気の強さで爪痕を残した。

仕掛け人はやはり指揮官だった。岡田監督は「前川の3番は俺が進言した。きのうヒット1本出て、(気持ちが)楽になっとるし、だいぶええ感じになってきとった」とたたえた。だが、本人は満足しない。「打ったあとの打席をもっと大事に、自分のやるべき事をしたい」。1軍定着へ、もっと打つ。【三宅ひとみ】

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