<巨人2-1DeNA>31日◇東京ドーム

 2年目の才能がついに開花した。巨人小山雄輝投手(23)が7回3安打無失点でプロ初勝利。1回にもらった1点の先制点を辛抱強く守り抜いた。今季4試合目、通算7度目の先発でつかんだ白星で、左肩違和感のため離脱している杉内の穴を埋めた。巨人で今季5人目のプロ初勝利で、マジックは「23」となった。

 小山がやった。「自分の初勝利よりもマジックを1つでも減らす。その気持ちが強かった」。初めての勝利投手、初めてのお立ち台、ウイニングボールをつかんだプロ2年目右腕が胸を張った。喜びの声は、ほどほどに「僕は結果を残さないと1軍にはいられない。また1週間、いや、明日から気を引き締めて次に向かってやっていきたい」と、りりしい表情で言った。

 気迫十分、度胸ある投球だった。最大のヤマ場は7回。2死から筒香に四球を与えた。続く後藤に二塁打を浴び、2死二、三塁のピンチを背負った。マウンドに向かった川口投手総合コーチは「ここまで来たんだから、最後まで頑張れ」。1軍では5回が最長だった小山にベンチが続投の決断を下した。「交代だと思ったけど使ってもらえた。なんとしてでも(期待に)応えたかった」と、アドレナリンが体中から湧き出た。

 その全てをぶつけた。梶谷に対し、カウント1-1から内角に直球を投げ込み「外角に投げて合わせられたら悔いが残る。強いボールで行きたかった」と、見逃しで追い込んだ。ファウルを挟み、勝負球のフォークで空振り三振。普段は温厚な男が右拳を握り締め、雄たけびを上げた。

 地道な努力が実を結んだ。187センチの長身から投げ下ろす直球は、この日、最速は145キロ。決め球のフォークは手応え十分で多投した。生命線として投球を支えたのは「カウントを取れるだけじゃなくて、直球とフォークが生きる」と、92球のうち17球を投じたカーブだった。春季キャンプで1人、特訓に励んだ。プレートとベースの間に置いた高さ約2メートルのネットを越すように繰り返し投げ込んだカーブが、東京ドームのマウンドでもイメージ通りの軌道を描いた。

 前夜までの「みちのく3連戦」で2位中日に負け越し、迎えたカードの頭の勝利は大きな意味を持つ。原監督も「それだけの投球をしてくれると次も当然、スターターの1人としてマウンドに上がるのではないでしょうか」と、“新戦力”の台頭を喜んだ。小山の同学年は沢村、プロ同期入団には宮国もいる。「僕が勝っているのは身長ぐらいですね」と話していた同僚との差が少し縮まった。「2人の存在があったから2軍でも前向きにできた」。少し後れを取っていた大型右腕が、Vロードを突き進むチームの輪に加わった。【為田聡史】