日本ハムが、WBC日本代表のレギュラー候補、糸井嘉男外野手(31)を軸にした2対3の大型トレードを敢行した。23日、両球団から発表された。糸井に06年新人王の八木智哉投手(29)を交換要員に加え、オリックスから木佐貫洋投手(32)大引啓次内野手(28)赤田将吾外野手(32)を獲得した。外野手で新星候補のルーキー大谷翔平投手(18=花巻東)の加入もあり、出血覚悟で補強ポイントを埋めた。全5選手がレギュラー級の実力を持つ、近年では例を見ない移籍劇となった。

 日本ハムが仰天トレードを仕掛けた。生え抜きスター選手の糸井を目玉にした補強策を敢行し、オリックスと2対3で成立させた。4年連続で打率3割超でゴールデングラブ賞に、2年連続でリーグ最高出塁率と、日本球界トップクラスの外野手に、八木をプラスして放出。補強ポイントだった先発投手の木佐貫、遊撃手の大引、外野手の赤田と一気に戦力を整えた。

 双方に生まれた小さな亀裂が、大型トレードへの引き金になった。昨年12月6日の契約更改交渉で、糸井が1000万円増の年俸2億円を保留。球団は出来高を付与する条件に変更して歩み寄ったが、合意に至らなかった。糸井は2度目以降は、代理人交渉へシフトチェンジして水面下で調整。金銭面では一定の折り合いがついたが、最終的に糸井側が要望した1つの条件がネックになった。

 関係者によれば糸井は、初回提示の年俸2億円を不服とし、日本ハムへ今オフのポスティングシステム(入札制度)活用でのメジャー挑戦を申し入れた。認められない場合は、国内他球団への移籍を要求したという。球団側はポスティングはのめず、意向をくむにはトレードと苦渋の決断を下した。来季続投が決まった栗山監督も、かねて常勝チームを作るために「優勝した時だからこそ安住せずにチームを変えたい」との考えを示していた。それもフロント陣の背中を押した。最大限メリットある戦力補強を画策し、結実した。

 実行できた背景には、綿密に練った強化戦略もある。糸井が抜けることで、陽と中田を含めた強固な外野の1枠が空く。投手と打者の二刀流に挑戦するスーパー新人の大谷が今季加入。打者では即戦力評価で高校時代は外野手で活躍し、1軍起用の幅が広がる。短期的な戦力ダウンは免れないが、中長期的なプラス材料も計算して踏み切った。

 弱点だった先発投手の補強に成功。内野陣も田中のメジャー移籍に、金子誠と小谷野が今オフに手術し、構想が見えなかった布陣にメドが立った。北海道へ本拠地移転10年目で日本一1度、リーグ優勝4度を果たした革新的な球団運営を象徴する一手が、またさく裂した。

 ◆糸井嘉男(いとい・よしお)1981年(昭56)7月31日、京都府生まれ。宮津-近大。投手として03年ドラフト自由枠で日本ハム入団。1軍登板がないまま06年4月に外野手転向。09年から4年連続打率3割、ゴールデングラブ賞獲得。ベストナイン3度。11、12年最高出塁率。187センチ、88キロ。右投げ左打ち。家族は夫人と2女。昨季推定年俸1億9000万円。