<ソフトバンク5-2楽天>◇25日◇ヤフオクドーム

 楽天銀次内野手(25)が規定打席を満たし、打率部門で3割3分6厘は、パ・リーグ3位に躍り出た。試合は逆転負けを喫したが、4回には、一時は勝ち越した攻撃の起点になる右前打を放った。開幕直後の不振を脱出してからは、星野監督も「不動の3番」と信頼を置く。楽天の攻撃を活発にするのは、3番銀次の出来がカギになる。

 節目の試合は、もっと気分よく迎えたかった。ヤフオクドームのベンチ裏は、重苦しい空気に包まれた。銀次は、険しい顔をした星野監督のすぐ後ろを歩く。報道陣から規定打席に達した感想を求められても「いずれ届くものですから。意識してません」と、うつむきがちに言うだけだった。

 実は待望の日だった。試合前のことだ。あと何打席で規定打席に到達するのか、知っているか否かを問われると、無言で右手を胸に上げた。その手には、指を4本示してあった。試合前の段階では256打席。この日で84試合目。規定打席は試合数×3・1。小数点以下は四捨五入するため、260で到達する。4打席と即答するのは、きっちり数えていたから。それだけに、勝ちたい1戦だった。

 「4つも併殺すれば、向こうに流れが行っちゃう」。敗戦の星野監督は、そう嘆いた。4併殺の最初は銀次だった。1回1死一塁、1ボール2ストライク。追い込まれても直球をしっかりセンター方向にたたいた。だが、マウンドの帆足にグラブで触られ、打球は中前に抜けずに、遊撃ゲッツー。絶好の先制機を逃してしまった。4回は、銀次の右前打から4連打と、打線の流れを生む安打を放った。ただ、勝利にはつながらなかったのも事実。「僕が出れば、と思っていたのですが」と、1安打以外の3つの凡退を悔やんだ。

 自力でつかんだ規定打席だ。開幕スタメンも、2戦目で外された。交流戦は代打要員だったが、代打6打数5安打の結果で、星野監督を振り向かせた。今では「もう銀次を3番から外さない」と監督に言わせる。今季の楽天は、4番ジョーンズと5番マギーの中核が得点源。3番銀次の出塁が、得点力に直結する。昨年から星野監督は「あいつは首位打者になれる」と素質を評価していた。監督の願いを、本当にかなえるポジションに、銀次はたどり着いた。【金子航】