<パCSファイナルステージ:楽天2-0ロッテ>◇第1戦◇17日◇Kスタ宮城

 楽天銀次内野手(25)が、値千金の決勝弾を放った。0-0の4回無死、ロッテ成瀬の内角直球を右翼スタンドに運んだ。プロ8年目で初出場したCSでの初安打が、均衡を破る先制ソロ。今季レギュラーシーズンの田中の先発試合では打率4割1分1厘、3本塁打とよく打つ。プレッシャーのかかる初戦で、またまたエースを援護した。

 大声援の中、銀次が右手を突き上げた。4回無死、ロッテの左腕成瀬が投じた内角高め直球を見逃さなかった。「最後の最後までボールを押し込めました」。フォロースルーの大きなスイングで捉えた打球は高く舞い上がり、右翼席へ。失投を1発で仕留め、「将大(田中)が気持ちを込めて投げていたので、魂込めて気合で打ちました。最高です!」と、待望の先制点をたたき出して喜んだ。

 前日は「全く緊張しないです。楽しみ」とケロリとしていたが、さすがに初体験の異様な雰囲気を感じていた。3回まで両チーム無得点の緊迫した展開。自然と高まる緊張感の中、打席に入る前に「平常心、平常心」と言い聞かせた。プロ8年目で左投手から放った本塁打は初。「普通にやったら、良い結果は出る。あとは気合と根性です!」と笑いながら振り返った。

 動きの硬い選手もいた中、最高の結果を残した。星野監督からの評価は「練習でも打たない素晴らしいホームラン。頼もしいやつになった」。今までにないくらい褒められた。めったにない褒め言葉も記憶に残るが、親のように心配してくれた優しさも忘れられない。「もし、お金なくなって飯が食えなくなったら、俺に言ってこい」と言われたことがある。「野球を知らない」などと数々の罵声を浴びてきたが、「すごく優しい」と常に感じている。だから、監督の期待に応えようとやってきた。その成果が、大舞台で出た。

 打線のキーマンになる男が、初戦から結果を残した。今季田中が先発したレギュラーシーズンの試合では打率4割1分1厘、3本塁打。なぜ田中の時に打てるかは「よく分かんないです」と笑う。続けて「あいつ(田中)はすごい。すごすぎます」と敬意を表した。その田中からは本塁打について「じぇじぇじぇ!」と言われた。エースをも驚かせる1発が、大きな1勝をもたらした。【斎藤庸裕】