<セCSファイナルステージ:巨人3-1広島>◇第3戦◇18日◇東京ドーム

 巨人が3連勝し、リーグ優勝によるアドバンテージの1勝を加えて2年連続34回目の日本シリーズ進出を決めた。1回に先制を許しながらも、阿部、坂本の適時打で逆転。盤石の横綱相撲で押し切った。原辰徳監督(55)はマイナスの要因をすべて排除して、このシリーズに臨んだ。

 うながされるようにして、原監督はおもむろに眼鏡を外した。選手たちの輪が、急速に縮まった。体が宙に浮く。10回。昨年のCS突破時と同じ回数だった。チームを支えるキャプテン、阿部の背番号の分だけ舞った。一気の3連勝で勝ち抜けを決めた。その喜びをこの瞬間にはじけさせた。「昨年のチームよりも、このチームは間違いなく強い」。そう胸を張った。

 勝利の確率を上げるのが監督の役割だ。4回、相手の一塁手の守備位置を見てランエンドヒットをしかけ、坂本の勝ち越し打につなげた。6回には高橋由に代走鈴木を送り、ロペスに送りバントを命じた。得点にはならなかったが、徹底した短期決戦仕様の采配ぶりは、球場をどよめかせた。

 全てのマイナス思考を排除して、このシリーズに臨んだ。CS直前、斎藤投手コーチから1冊の本をもらった。「死の淵を見た男」という福島第1原発の吉田昌郎所長について書かれたもの。以前から読みたいと思っていた。しかし、ページをめくろうとした原監督は、ふと思いとどまった。複雑な思いや暗い気持ちになるかもしれない。「よし、これはポストシーズンが終わってからにしよう」と、本を閉じた。

 秘密のおまじないがある。「ネガティブになってはいけない。だけど、よくないことを考えてしまう時というのは必ずある」。そういうときは声に出して「なし」と言う。「それから両方の肩にフウッと息を吹きかけるんだ」。そうすると、今考えた良くないことが消え去るという。そうやってプラス思考を保ってきた。

 その効果か、この3連戦のタクトはさえ渡った。第1戦では好投の内海に、4回で代打を送り、フル稼働の継投で逆転勝ちにつなげた。第2戦では前田健攻略に、追い込まれても変化球を待つ徹底ぶりで崩した。どれも失敗を恐れないプラス思考の采配だった。「悪いことばかり考えていても仕方がない。それは起きた時に考えればいい」。どこまでも強気に戦った。

 昨年は3連敗スタートからの突破。今年は「その教訓が生きていた」と、3連勝で片を付けた。短期決戦の強さを見せつけた原監督は「まだ、最後の山がある。この最後の山を越えて、必ず日本一を取ります」と約束した。今季は日本一連覇を公言してスタートした。それが見えるところまで来た。1973年のV9以来となる2年連続日本一まで、あと4勝だ。【竹内智信】