<パCSファイナルステージ:楽天2-0ロッテ>◇第3戦◇19日◇Kスタ宮城

 楽天がでロッテを破り、CS突破に王手をかけた。CSファイナルステージ(6試合制)の第3戦が行われ、先発の美馬学投手(27)が三塁を踏ませず、4安打無失点に抑えた。プロ3年目。レギュラーシーズンでは1度もなかった完封勝利を、CSという大舞台でやってのけた。これでリーグ優勝による1勝のアドバンテージを含め3勝1敗。20日の第4戦に勝つか引き分けると、創設9年目で初の日本シリーズ進出が決まる。

 最後の打者を抑えた美馬は、駆けてきた女房役と抱き合った。「嶋さんが強気にリードして引っ張ってくれました」と感謝した。直前に1発同点のピンチを招いた。2-0の9回。ロッテ井口に四球を与え、初めて先頭打者を出した。最後の試練でも、ストライク先行で4番今江を追い込むと、内角シュートで二ゴロ併殺に仕留めた。「まさか、こんな時にやるとは。正直、思ってなかったです」

 前日のショックを振り払った。第2戦は則本が9回1失点も、延長で敗れた。連敗ならロッテに傾きそうな流れだったが、美馬は「1、2戦とも先発が頑張っている」と重圧はなかった。むしろ勇気をもらっていた。

 この日を迎えられるかは、半信半疑だった。4日の西武戦で古傷の右肘に痛みを覚え、3回途中降板。4度の手術歴がある箇所で、出場選手登録を抹消された。「正直、戻れるとは思っていなかった。チャンスをもらえるか不安だった」。幸い、抹消から3日後にはキャッチボールを再開し、2週間で戻ってきた。CS第3戦の先発に抜てきされたことを意気に感じ、169センチとやや小さな体から腕を振り続けた。

 昨季は四球から崩れ、完封目前の9回に失点する試合が続いた。「一生、完封できないです」と口にしたこともあった。プロ初完封の要因を聞かれ「運です。本当に運が良かった。逆球でもファウルや打ち損じがあった」と真顔で答えた。運を味方につけたのはこの試合だけではなかった。今年5月23日の巨人戦で、右肘痛のため1回6失点で2軍落ち。球団から手術の許可を得たが、1週間ノースローの後、キャッチボールを試すと痛みが和らいでいた。「自分もびっくり。お医者さんもびっくり。なんで治ったか分からなかった」。トレーナーも「前例がない」と驚く“幸運”だった。手術していたら、この日はなかった。

 星野監督には「今年一番じゃない。入団以来、一番。やればできる」とベタ褒めされた。美馬は「気持ちいいですね。最後まで終えて立っているのは幸せ。本当にうれしかった」と喜んだ。次は、日本シリーズでの登板が期待される。「あした決めてもらって、チャンスがあればしっかり投げたい」と控えめに言った。日本一を決める場で、もう1度幸せを味わう。【古川真弥】

 ◆小兵投手の完封

 身長169センチの美馬は、ポストシーズン(プレーオフ、CS、日本シリーズ)で史上初めて、170センチ未満の完封投手となった。これまで最も小兵は51、52年日本シリーズで完封した藤本英雄(巨人)の170センチ。現役投手の身長では谷元圭介(日本ハム=166センチ)石川雅規(ヤクルト=167センチ)に次いで3番目に低い。

 ◆美馬学(みま・まなぶ)1986年(昭61)9月19日生まれ、茨城県出身。藤代高2年の03年春、甲子園に出場し3回戦敗退。中大から東京ガスを経て10年ドラフト2位で楽天入団。通算3年の成績は64試合16勝16敗、防御率3・45。今季6勝5敗。169センチ、75キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸3100万円。ってのけた。これでリーグ優勝による1勝のアドバンテージを含め3勝1敗。20日の第4戦に勝つか引き分けると、創設9年目で初の日本シリーズ進出が決まる。