<イースタンチャレンジマッチ:ヤクルト18-1フューチャーズ>◇14日◇戸田

 剛速球がマウンドに戻ってきた。右肩痛で12年4月から実戦を離れていたヤクルト由規投手(24)が、フューチャーズ戦(イースタン・リーグの混成チーム)に先発。最速155キロをマークするなど150キロ台を連発し、1回を2奪三振で無安打無失点に抑えた。久々の登板でエンジンの違いを見せつけ、復活への第1歩をしるした。

 これが本当にリハビリ明けの投手の球なのか。大方の予想を裏切る由規の剛球に、戸田球場がどよめいた。792日ぶりの実戦登板で初球は148キロ。4球目に150キロを超えると、15球目の「追い込んでいたので三振を取りにいった」という高め直球は、最速の155キロをマークした。「正直、手術してここまでスピードが戻るとは思っていなかった。調子よくなかったけど、マウンドで勝手にアドレナリンが出た。自信になる」。21球中11球が150キロを超えた。

 野球を楽しんだ。グラウンドに来るまでは「ガチガチだった」が、球場に入ると自然と表情が和らいだ。マウンドに上がる際の声援も耳に入るほど冷静になった。試合後にファンから「お帰り」と声を掛けられると、「いろいろ考えた」と目を潤ませた。

 リハビリ中、新たな取り組みに挑戦した。直球を生かすためフォークボールを習得し、肩の負担が少ないフォームも模索した。「余計な動きを減らす」ためテークバックが若干小さくなったが「(直球で押す)スタイルを変えなきゃと思っていたけど、スピードが出ているのはマッチしているということ」と新フォームに手応えをつかんだ。

 今月、大谷(日本ハム)が160キロを出し、最速161キロの由規が図らずも脚光を浴びた。「取り上げていただきありがたい。ヤフーの急上昇ワードになりましたし。抜かれるのは時間の問題と思っていたけど、モチベーションの1つです」。日本人最速の看板を簡単に譲るつもりはない。今後は肩の状態を確認しながら、次回登板を決める。【斎藤直樹】<由規の苦悩の日々>

 ▼11年9月3日

 巨人戦(神宮)で7回2失点で7勝目。これが最後の1軍登板。

 ▼同9月9日

 右肩の張りで出場選手登録を抹消。「最短の10日で戻れるようにしたい」と話したが、痛みは引かずに2軍で終える。

 ▼12年2月27日

 韓国KIA戦に登板。最速151キロで、2回1安打3奪三振。

 ▼同4月13日

 富士重工との練習試合に先発し、最速146キロで8回8安打3失点。これが最後の実戦登板。

 ▼同4月21日

 右肩の違和感でイースタン・リーグ巨人戦(那覇)の先発を回避。

 ▼同5月24日

 都内病院での検査で左脛骨(けいこつ)粗面の剥離骨折で全治2カ月と診断される。

 ▼13年4月11日

 横浜市内で右肩のクリーニング手術。リハビリに1年を費やす。

 ▼14年1月5日

 座った捕手相手への投球練習を再開。

 ▼同6月5日

 フリー打撃に登板し、又野と川上に計41球。打者への投球は、783日ぶりだった。