<阪神0-4楽天>◇21日◇甲子園

 楽天打線に変化の兆しが見えた。新加入のザック・ラッツ内野手(28)が「5番三塁」でデビュー。早速、二塁打2本の2安打1打点と活躍した。中軸に新戦力が加わったことで、打線が機能した。投げては、則本昂大投手(23)が7安打無四球で、史上初となる交流戦4完封目を達成した。投打がかみ合い、久々の快勝だ。

 左翼席の一角に、わずかに陣取る楽天ファンのコールに応えた。8回の攻撃が終わった後だ。ラッツは三塁の守備に就くと、自分の名前が連呼されるのに気がついた。後ろを向き、帽子を取って軽く頭を下げた。「1週間に1回はそる」という頭はツルツルだった。前日の会見ではあった無精ひげもなくなっていた。身だしなみを整え臨んだデビュー戦。早くもファンの心をつかんだ。

 右に、左に、持ち前の広角打法を発揮した。4回先頭、阪神メッセンジャーに4球で追い込まれてからファウルで粘った。高めに140キロ台後半を投げられても、食らいついた。9球目、外のスライダーを流し打って右越え二塁打。続くボウカーの2ランで生還した。8回1死一、三塁では、左翼へエンタイトル二塁打を放ちダメ押しの4点目。来日初打点で、メッセンジャーをKOした。

 初顔が続くが「まずは全力でプレーすることが、データより先。向こうも修正してくるだろうけど、自分も修正して上回ればいい」と頼もしかった。守備も全力だった。はつらつプレーのわけは、ジョーンズの存在がある。「彼の後ろを打てて誇りに思う」。メジャー通算434本塁打の先輩は、マイナー生活が長かったラッツには雲の上の存在だ。前日の練習中、ベンチ前のフェンスに2人で腰掛け、日米の投手の違いをレクチャーされた。10分ほどだったが「それだけでうまくなった気がする」。この日の試合中も隣に座り、打席での狙いを聞いた。「この経験を成長につなげたい」と、目を輝かせた。

 佐藤監督代行は「打たなくても、いるだけで相手に与えるものが違う」と手応えを口にした。ラッツは「苦しいチームを助けたくて来日した。少しはできたと思う」と腰が低かった。打線のつながらなさが緊急の課題だった。中軸にラッツが加わり、変化の兆しが見えた。【古川真弥】