<ロッテ8-7楽天>◇6日◇QVCマリン

 究極のルーズベルト・ゲームだ。ロッテが楽天14回戦で9回裏に打者9人で6安打2四球を集め、6点を奪って逆転サヨナラ勝ち。最後は1死一、三塁から、川本良平捕手(32)がファルケンボーグの速球を左前に運ぶ殊勲打を放った。9回に5点差以上をひっくり返すのは4年ぶり8度目の快挙。4位と5位を行ったり来たりを続けていたチームに、4連勝で最高の勢いをもたらした。

 川本は打った瞬間、右腕を突き上げ一塁へ走った。三塁からは今江もガッツポーズで生還。本塁付近では次打者の、この回先頭で三塁打を放ち火を付けた岡田が滑って転んでいた。一塁付近ではナインの興奮の輪が広がっていった。

 お立ち台で川本は感無量だった。ヤクルトから移籍して2年目で、6回に代走で途中出場し、そのままマスクをかぶった。ロッテでヒーローインタビューを受けるのは初めてだった。「ここに立ちたくて、立ちたくて。でもチャンスで打てなくて…。やっと立てました」。打席に向かう前、立花打撃コーチから「目線を下げて低めを狙え」とアドバイスを受けた。その通り甘く入った直球をたたいた。捕手としての読みもあった。「得意なストレートで来る。前2人はフォークを打っていたから」。今江の2点左翼線二塁打、クルーズの中前適時打の配球を観察し読み切っていた。

 伊東監督も顔を赤らめて引き揚げてきた。「興奮してるぞ。まさかこうなるとは。長年やっているけど記憶にない」。自身も94年4月9日の開幕戦、近鉄を相手に0-3から逆転サヨナラ満塁弾を放っている。ミラクル男をしても信じられない勝ち方だった。「高校野球であったでしょ。8点差だっけ?

 頭をよぎりましたよ」と、石川県大会決勝で9回に9点を奪って逆転勝ちした星稜の試合を引き合いに出した。

 9回は先頭の岡田が左中間三塁打で出塁。鈴木、加藤も単打で続き、角中が四球を選んだところで西宮をKO。代わったファルケンボーグからデスパイネも四球を選んで満塁。1死後から今江、クルーズの連打で同点に追い付いた。加藤の安打が出た当たりからベンチはイケイケムード。伊東監督は「最後まで諦めない去年の状態に近づいてきた」と、上機嫌だ。上位進出という目標に向け、この上ない勝ち方となった。【矢後洋一】

 ▼ロッテが5点リードされていた9回裏に6点を挙げてサヨナラ勝ち。9回裏に5点差以上をひっくり返したサヨナラ勝ちは10年9月4日に楽天が西武戦で記録して以来、史上8度目。ロッテは83年8月2日日本ハム戦(川崎)で落合が江夏から右前打を放ち6-5で勝って以来、チーム31年ぶり2度目。川本のサヨナラ打は、ヤクルト時代の10年4月3日横浜戦(神宮)での代打逆転サヨナラ2点本塁打以来2度目。

 ◆星稜高の大逆転

 7月27日、全国高校野球選手権石川大会決勝(石川県立野球場)で9回表まで0-8で負けていた星稜が、9回裏に一挙9得点で逆転サヨナラ勝ちした。打線が8回まで2安打に抑えられていたが、9回に岩下大輝投手(3年)の2ラン本塁打など8安打2四球に振り逃げも加わり、逆転した。米全国紙「USA

 TODAY」の電子版が「試合後は両チームが泣いていた。クレージーだ」と報じるなど、米国にも伝えられた。