津田さん僕はもっと頑張ります…。1年目から10勝した広島ドラフト1位の大瀬良大地投手(23)が10月中旬、山口・周南市内に向かい、“炎のストッパー”としてカープ黄金期を支えた故津田恒実さんが眠る墓を初めて参った。32歳の若さで亡くなった背番号14の大先輩に1年目の報告を終え、勝負の2年目へ気持ちを新たにした。今日20日から秋季練習が始まる。

 秋の夕焼けを全身に浴びながら、大瀬良は無言になった。静かに真っすぐ前を向いて。目の前には津田家の墓があった。心の中で背番号14の大先輩に1年目の報告をした。目を閉じて手を合わせた。何も言わずほうきを手にして、竹やぶに囲まれた墓を掃除した。

 「やっと、あいさつできました。ホッとしました」

 CSファーストステージで阪神に敗れた12日から数日後の休日。片道2時間をかけて、故津田恒実さんの元へ向かった。脳腫瘍のため32歳の若さで天国へ旅立った大先輩。学生時代から、同じ気持ちを前面に出す投手として尊敬していた。「気持ちを出して行くところを受け継いでいけたら」。その言葉通りの投球を披露し、1年目から2ケタ勝利を達成した。

 携帯電話には1枚の写真を保存してある。マツダスタジアムのブルペンに向かう通路、その壁に設置された津田さんのプレートだ。「直球勝負

 笑顔と闘志を忘れないために」。プレートに書かれた言葉を1年間、すべて体現した。大先輩に支えられて今がある。感謝と決意を直接伝えたかった。

 「ここまで良くしてもらって…。本当に来て良かったと思います」

 津田さんの故郷に到着し、墓の場所を聞こうと近くの公民館に向かった。偶然、大先輩が6年間通った和田小学校の1年生から6年生まで約30人が放課後の集団学習で集まっていた。子供たちに「カープの大瀬良大地です。津田さんの背負った14番をつけさせてもらっています」と自己紹介。即席サイン会は地元民も集まって大盛況となった。

 津田さんの顕彰碑を目に焼きつけた。津田さんの親族が厚意で生家を開けてくれたこともあり、大切に保管されていたトロフィーや賞状、写真などを特別に見ることもできた。

 「津田さんは1年目から11勝されたんですもんね。僕なんか、まだまだ。頑張らないといけない」

 帰路に就くころ、大瀬良の表情からは1年間の疲れが消えていた。今日20日からは緒方新監督の下、秋季練習が始まる。英気を養い、勝負の2年目に向かう。【佐井陽介】