ライバルはマー君だ!

 楽天ドラフト1位の安楽智大投手(18=済美)が23日、愛媛・松山市内のホテルで入団交渉を行い、契約金1億円、年俸1200万円で合意した。会見では高校生とは思えないほど、堂々とした受け答えを披露。憧れのヤンキース田中をライバルにしたいと言い切った。不安視される右肘の完治も強調し、1年目での開幕ローテーション入りを目標に掲げた。

 頼もしい、強気な宣言だった。安楽は約50人の報道陣に囲まれても、臆することはなかった。「田中さんは憧れをもらった選手。でもいつまでも憧れの存在ではダメ。プロである以上ライバル。超えたい存在です」。シーズン24勝0敗の世界記録を打ち立て、メジャーへと渡った田中をライバルと言い切った。

 偉大な球界の先輩を常に目標としていた。駒大苫小牧時代から闘志をむき出しにするスタイルに大きな影響を受けた。メジャーでスプリットを多投すると知れば、自らも覚えた。「(田中が)1年目に11勝をした時もすごいと思った。自分も心に秘めている数字があります」と明言こそしなかったが、1年目の田中の勝ち星を強く意識していた。

 言葉だけを切り取れば、ビッグマウスとも受け止められない。しかし、発言の裏には強い覚悟がある。「将来性にかけられていると思ったら、成長が止まる。1年目、2年目だからいいやではだめ。いつクビを切られるのか分からない中で、1日1日が勝負」。2年生で157キロを記録するも、3年時は右肘の故障に悩まされた。甲子園出場を逃し、恩師である上甲監督も9月に病気で亡くなった。逆境に立たされる中で、あえて高い目標を課すことがモチベーションとなり、成長につながると確信している。

 だからこそ言葉にいやらしさを感じさせなかった。交渉を行った長島スカウト部副部長も「20年近く選手を見ているけど、ここまで考えている子は初めて。しっかりしすぎ」と驚いた。

 1年目の目標を問われ、安楽は「難しいことを夢に挙げることが大事だと思っている。開幕ローテーション入りを目指したい」と即戦力の活躍をしたいと意気込んだ。背番号は決定しなかったが、12、15、20が有力。昨年まで田中がつけていた背番号18の継承は見送られたが、勝ち取る日を予感させる威風堂々の会見だった。【島根純】