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勝敗を分けた延長戦

大量リードから一転、世紀の大乱戦

1イニングで満塁本塁打と3点本塁打を放ち7打点を稼ぎ祝福される池山隆寛(中央)
1イニングで満塁本塁打と3点本塁打を放ち7打点を稼ぎ祝福される池山隆寛(中央)

 「あの試合は、よく覚えているよ」。ヤクルトの池山2軍打撃コーチは、懐かしそうにほほ笑んだ。93年5月19日、神宮球場での広島戦。両チームから合計42安打が飛び出した乱打戦は、延長14回にヤクルトがハドラーの中前適時打でサヨナラ勝ちをして17-16で幕を閉じた。池山は「6番遊撃」として先発出場していた。「感想を言うなら、負けなくて良かったという試合だね。でも、自分の中では延長戦のベスト3に入る試合だよ」と苦笑いした。

 野球は最後の最後まで分からない-。そんな格言通りの試合だった。ヤクルトは3回に11得点を挙げた。池山はこの回に満塁と3ランの2打席連続本塁打を打ち、1イニング2本塁打の離れ業を演じて見せた。「93年は結婚した年でね。前半戦は調子が悪かったから、この試合の本塁打で、ようやく大きな仕事ができたかなと思ったかな」。3回を終え、13-5と大量リードを奪った。「楽勝やと思っていた。そうしたら、どんどんリードがなくなってね」。

 ここから、筋書きのないドラマの幕が開いた。広島が徐々に差を縮め、8回には7安打を集めて16-16の同点とした。押せ押せ状態の広島に、焦るヤクルト。まさかの延長戦突入となった心境を、池山は「これは負けられへんぞって思いが強かったね」と振り返った。そして延長14回1死から広沢克、ハウエル、池山が四球で満塁とし、2死後にハドラーがけりをつけた。

大記録がかすんだ、5時間46分

5時間46分、42安打、10本塁打、両チームあわせ33得点を示すスコアボード
5時間46分、42安打、10本塁打、両チームあわせ33得点を示すスコアボード

 池山は6打数4安打8打点、2本塁打の活躍で勝利に貢献した。その試合後、忘れられない出来事があったという。「1イニング2本塁打は記録にも残って、報道陣に『何を打ちましたか』って聞かれたんだけど、打ったのが3回で、試合は14回までやったでしょ。だから、本塁打のことを思い出すのが大変でしたね」と笑って明かした。試合後の取材対応の笑い話も、5時間46分という試合のすさまじさを物語っていた。

 1年間を通して戦い続けるプロ野球の世界で、延長戦に突入するということは多大なエネルギーを消費することを意味する。9回で決着をつけるに、こしたことはない。でも、と池山は言う。「最後まで何が起こるか分からないって、あらためて思ったなあ」。気を抜くな、油断するな、あきらめるな。さまざまな教訓を、14イニングに及ぶ戦いから再認識していた。

 「あの延長戦は、野球の面白さが詰まっている試合なんじゃないかな」。勝負は最後の最後まで分からない。だからこそ、野球は面白い。今は打撃コーチとして指導に当たる池山だが、その信念は現役時代と変わらない。【浜本卓也】

ライアン小川に続く石川の復調がカギ

今シーズンのキーマンとなる石川
今シーズンのキーマンとなる石川

 ヤクルトには昨季最多勝で新人王の「ライアン」小川と、プロ野球新記録の60本塁打を放ったバレンティンという投打の「大黒柱」がいる。それでも昨季は最下位に終わった。この2人に続く「柱」の登場が、浮上の絶対条件になる。

 投手では石川の活躍が欠かせない。昨季は6勝止まりで、プロ12年間で3度目の1ケタ勝利に終わった。今オフは後輩の館山とハワイで合同自主トレを行うなど意欲的。キャンプでも両サイド低めの直球にこだわって仕上げてきた。ライアンとともに、1年間投手陣を支える準備は整った。

 野手では川端だろう。宮本慎也氏が現役引退し、チームを引っ張ろうと自覚は十分。毎年けがに苦しんだが今季は3年ぶりに春季キャンプをフルでこなした。バレンティンの前後の打順で1年間フル出場できるようなら、ヤクルトの得点力はアップしているはずだ。

ヤクルト担当記者

浜本卓也(はまもと・たくや)
浜本卓也(はまもと・たくや)
1977年、大阪府生まれ。約2年間のフリーター生活を経て、03年に入社。競馬、競輪、J1清水、格闘技、ボクシングなどを担当し、11年からプロ野球を担当。


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