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勝敗を分けた延長戦

3連続延長ドロー 36イニングの死闘

延長10回まで無失点で降板する和田毅(左)にねぎらいの言葉をかける王貞治監督=福岡ヤフードーム(08年8月31日)
延長10回まで無失点で降板する和田毅(左)にねぎらいの言葉をかける王貞治監督=福岡ヤフードーム(08年8月31日)

 3日間で13時間32分、36イニングの戦いに白黒はつかなかった。08年8月31日。夏休み最後の福岡ヤフードーム(当時)。ソフトバンクは西武と史上初となる「同一カード3試合連続12回延長引き分け」という記録を残した。

 29日の初戦は杉内から7投手の継投で4―4、30日はホールトンから5投手が継投して2―2。そして史上初の記録のトリは、両軍無得点の引き分けだった。

 12球団ダントツの171発を誇る西武打線を4投手で封じた。先発和田が延長10回を投げれば、11回は篠原、水田で小刻みにしのいだ。最後は5連投の守護神馬原を温存し、佐藤が打者3人で締めくくった。スタミナの厳しい夏場。篠原、水田、佐藤の30代トリオは3連投と力を絞った。水田は「記録的な試合に3試合とも放れて、誇りです。残り試合も少ないし、どんどん投げたい」と平気な顔で汗を拭った。

 王監督は「今週は投手の神様が当番だったな。うちより強力打線の西武がゼロ行進だからね。投手の踏ん張りでトップの西武に3つ引き分けたから」と仕事をねぎらった。午後1時開始のデーゲームは4時間29分を要した。夏休みの宿題を残したまま、最後まで声をからした子供たちには〝ダメージ〟だったかもしれない。

 2軍が24年ぶりのウエスタン・リーグ優勝を決めたこの日、皮肉にも1軍のターニングポイントとなったと言える。すでにマジックナンバーをともしていた西武との直接対決。8ゲーム差でつけていた2位ソフトバンクは奇跡の逆転Vへこの3試合がヤマ場だったが、相手はマジックを3つ減らした。「中身としては明後日以降、自信が持てる内容だった。クライマックスシリーズ(CS)に向けていい試合ができた。自信を持って、(日本ハム戦のある)北海道でもやっていきたい」。残り27試合へ王監督は悲観せず、必死に前を向いた。

王監督勇退表明も大失速…6位転落

シーズン最終戦終了後、楽天野村克也監督から贈られた花束を手にファンの声援に応えるソフトバンク王貞治監督=クリネックススタジアム宮城(08年10月7日)
シーズン最終戦終了後、楽天野村克也監督から贈られた花束を手にファンの声援に応えるソフトバンク王貞治監督=クリネックススタジアム宮城(08年10月7日)

 しかし、死力を尽くした延長戦で疲れ切ってしまったのか、投手も打線も踏ん張れない。9月は4連敗、5連敗、7連敗…。あの死闘以降、ラストスパートをかけるはずが、6勝21敗とまさかの大失速が起きた。悪い流れを断とうと9年ぶりにドームの開閉式屋根を開けて試合開催もあった。わらにもすがる思いだった。その中、9月23日には王監督が勇退を表明。そんな最後の〝カンフル剤〟も効かなかった。迎えた10月7日のKスタ宮城。楽天とのシーズン最終戦もまた、延長12回サヨナラ負けという不思議な運命だった。2位から、CS進出どころか6位の大転落だった。

 現在は秋山監督が率いて常勝チームづくりを進めている。逆転Vをかけた球史に残る戦いには、球団のターニングポイントが伏流として存在した。【押谷謙爾】

即効性ある大型補強で独走V体勢

攻撃力が増したクリーンアップの一角を担う李大浩
攻撃力が増したクリーンアップの一角を担う李大浩

 孫オーナーから優勝を厳命されたフロントは即効性のある大型補強に踏み切った。ライバル球団で実績を積んだ外国人選手、FA選手を資金かけて獲得。今年だけは選手育成には少々目をつむっても目の前の勝利をつかむ。

 先発投手は前阪神スタンリッジ、前日本ハム・ウルフ、中日からFAの中田が入り、エース摂津に続く柱ができた。リリーフも抑えに前西武サファテ、セットアッパーにアスレチックスから2年ぶり復帰の岡島を迎え、開幕からフル回転の働きぶり。野手では前オリックスの李大浩の加入が大きい。昨年固定できなかった4番に座り、3番内川、5番長谷川と首位打者経験者が前後を固めたオーダーは攻撃力がある。若き大砲柳田も成長し、どこからでも得点できる。

 扇の要も日本ハムからFAの鶴岡の加入でより強固に。下馬評通り、断トツで優勝する可能性が高い。

ソフトバンク担当記者

押谷謙爾(おしたに・けんじ)
押谷謙爾(おしたに・けんじ)
 96年入社。総務部、レース部、報道部、大分支局を経て、07年から野球担当で、ソフトバンクとオリックス、12年から再び鷹番。


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