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早出で快晴の下、ティー打撃を行ったイチロー（撮影・加藤哉）

　イチロー外野手（３５＝マリナーズ）が志願の早出特打で、スランプ脱出へ汗を流した。神宮球場での全体練習となった２日、イチローは青木、川崎、片岡ら若手野手とともに１時間も早く球場入り。約３０分にわたって行ったティー打撃では、数センチにこだわった調整をした。１日の巨人との強化試合では１番に戻ったが５打数無安打と快音を響かせず、６試合で打率１割３分（２３打数３安打）。５日の本番を前に、「日本の生命線」イチローの状態は上がってくるか。

　気温７度。強い風が吹き付け、体感温度はさらに低かった。そんな悪条件の中、イチローは１時間も早く球場に入った。弟分のようにかわいがる川崎らとともにバットを持って、グラウンドに姿を現した。

　篠塚打撃コーチが「（早出特打は）本人たちの希望によるものです」と説明した。イチローは入念にストレッチで体を温め、軽めのダッシュを終えて、ようやくティー打撃を開始した。

　初めは体を起こすように、大きめのスイングでボールを打った。「個人的には（調整レベルを）６、７割のところまで持っていけなかった。毎度のことだが、結果が出ないと悔しいし、つまらない」。１日の巨人との試合後、イチローは穏やかでない胸中を明かしていた。

　一夜明けて、数センチ単位にこだわった“イチ流”の確認作業を行った。１日の巨人戦。打席内のイチローは、両足のつま先をホームベースに向かって正対させていたが、この日のティー打撃では左足を最大約３センチ、捕手側に向けて球を打ち返すなど、微妙な角度を調整した。外角の球にやや踏み込んでいけない姿勢がみられた強化試合での形を矯正するかのようにもみえた。

　ティー打撃後に行ったフリー打撃でもこれまではホームベース寄りの白線ギリギリに立っていた打席の位置を、ほぼ中央へと移動。ベースから距離を置くことで、投球の軌道を確認し、そこから打ちにいった。０７年シーズン中にもベースから離れた位置に立つことで、安打を量産した経験もある。約３０分行ったティー打撃と約６０球の打撃練習の中で本来の姿を取り戻そうと、打開策を模索した。

　実戦６試合で打率１割３分。２月２５日のオーストラリア戦（京セラドーム）の第４打席から１１打席連続無安打と快音が聞かれないが、篠塚コーチは「状態が上がらないのは苦しいだろうが、本番になれば気持ちもグッと上がるタイプ。この２、３日の間にうまく調整してくれればいい」と全幅の信頼を寄せている。

　本番まであと２日。無言だったが、連覇を狙うサムライジャパンにとって、イチローの力は欠かせない。限られた時間の中で、世界の“ヒットマン”が懸命に「らしさ」を取り戻そうとしている。【石田泰隆】

　［2009年3月3日9時29分　紙面から］

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