総合格闘技18年ぶりの東京ドーム開催となったRIZIN28大会が13日行われた。興行を無事に成功させた榊原信行CEO(57)が試合後に総括を行った。

クレベル(左)に敗れぼう然とする朝倉未来(2021年6月13日撮影)
クレベル(左)に敗れぼう然とする朝倉未来(2021年6月13日撮影)

クレベル・コイケに敗れ、引退をほのめかした朝倉未来に対しては「辞めさせるつもりはない。復帰戦に向けて熱烈なラブコールを送りたい」と明かした。昨年11月にフェザー級王座決定戦で斎藤に敗れ、現時点ではベルト戦線からは後退しているが「何試合か実績を積んで、外国勢も入って来れば環境も変わる。今後に向かって進んでもらいたい」とエールを送った。

3人目の所英男(右)にパンチを放つ那須川天心(2021年6月13日撮影)
3人目の所英男(右)にパンチを放つ那須川天心(2021年6月13日撮影)

3選手と戦った那須川については「無事に終わって良かった。企画としては、はまったかなと。非難するファンもいたが、リスクのある勝負だったし、チャレンジは大事。枠をはみ出てこれからも挑戦していきたい」と語った。那須川のボクシング転向まで残り3戦。RIZINに出場するのは大みそかの1回となる。皆が待ち望む武尊との一戦については、これまでもK-1、RISEサイドと何度も話し合いを重ねてきた。「しっかり相談していけたら」と今後も検討を続ける。

今回、特に苦労したのはムサエフ、ケラモフの外国人選手の招集だった。5月末に入国したが、東京五輪前ということもあり「管理が厳しかった」。馳浩衆院議員らを通してスポーツ庁にお願いし、認めてもらったため、隔離は厳重に行った。入国管理局からは毎日のように確認の電話が入ったという。部屋にはトレーニング器具を設置。食事は本人たちの希望するものをスタッフが調理して届けた。「コンディションはいい」と話していたが、2人とも敗戦。通訳の1人が交通事故で来日できなくなったこともあり、榊原氏は「大変だったと思う」と思いやった。

今大会は約1万人を動員した。無観客の可能性もあったが「それでもやる」と東京ドームでの開催に強い意志を示していた。18年前も榊原氏が中心となって手がけていた。15年にRIZINを立ち上げてからは「東京ドームでやる」ことを目標に交渉を続け、6年かけてようやく実現。「格闘技界で過去に見たことのないような歴史に残る戦いになる」と自信を持って臨み、成功させた。

花道を入場する那須川天心(2021年6月13日撮影)
花道を入場する那須川天心(2021年6月13日撮影)

五輪期間中は開催を予定していない。「ぶつけても五輪の記事にかき消されてしまうと思う。無理矢理やるよりは、秋以降にしっかり」。もし、中止となれば「1カ月くらいあればなんとかなる」と、空いた会場で大会を開催することも検討していたという。コロナ禍でイベントの開催や収容人数などがなかなか定まらない中「早く決めてほしい」と漏らすこともあったが、対策を徹底し、迅速に対応した。

大会を無事に終えた今「五輪に向けてスポーツが盛り上がっていけたら」と話す。格闘技でスポーツの素晴らしさをアピールした榊原氏は、東京五輪の盛り上がった熱を受け取り、秋から再スタートを切る。【松熊洋介】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)