WBO女子世界アトム級王者の岩川美花(38=姫路木下)が負傷のため、10月15日に予定の防衛戦を延期することになった。東京・後楽園ホールで鈴木奈々江(29=シュウ)を相手に2度目の防衛戦を予定していた。岩川陣営によると練習中に右肩の異変を訴え、診察の結果、「腱板(けんばん)の損傷」という診断結果が下された。右肩を上げられない状況で、今後の選手生命にも関わるとして延期を決めた。試合については、今後の回復具合を見ながら決められる。

岩川にとっては無念の決断となった。望んでけが、試合の延期に結論付ける選手など1人もいない。岩川も異変が発生してから何度も病院に通い、試合を行う可能性を模索してきた。痛み止めを服用としての試合強行も選択肢にあがったが、今後の選手生命にもかかわる事案として、挑戦者側に中止を申し入れた。

本人としてはもちろん、かなり悔しい。試合に向けて減量も含めた過酷な調整を行ってきた。それが直前になって右肩が上がらない。岩川は「右肩が上がらなくても、どうなっても試合を考えたことがあった」。ボクシングは興行の世界。それだけの責任感を負い、ボクサー人生をかけることも考えたが、周囲の意見もあり延期の決断となった。

精神的な強さを最大の武器としている。「私はこんなことではへこたれませんよ」ときっぱり言い放った。今回も試練と受け止め、未来に向けた財産とする。ただ、対戦予定だった鈴木には申し訳ない。「ほんまにすんません」と平謝りだった。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

◆岩川美花(いわかわ・みか) 1983年(昭58)7月26日、高知県香南市生まれ。中・高とバスケットボールで活躍し11年12月、井岡弘樹ジムからプロデビュー。16念8月、東洋太平洋女子ライトフライ級王者。18年7月、WBO女子世界アトム級王者。今年4月、高砂ジムから姫路木下ジムへ移籍。身長161センチの右ボクサーファイター。戦績は10勝(3KO)1分け5敗。

岩川(右)は判定で鈴木を下し、初防衛を飾る(2020年9月26日撮影)
岩川(右)は判定で鈴木を下し、初防衛を飾る(2020年9月26日撮影)