地方のジム所属で初、岡山のジムから世界王者を目指すWBA世界フライ級1位ユーリ阿久井政悟(28=倉敷守安)が、23日にエディオンアリーナ大阪で同級王者アルテム・ダラキアン(36=ウクライナ)に挑む。当初は昨年11月に東京で開催予定も諸事情で延期となった一戦。その試合直前に岡山・倉敷市の所属ジムを訪ねた。
同ジムからはかつて、元東洋太平洋ミニマム級王者ウルフ時光が2度、世界戦に挑んではね返された。世界戦の興行を行うために大きな借金を抱えながら「岡山のジムから世界王者を」という夢を追いかけたのが元日本スーパーライト級王者の守安竜也会長(70)。にこやかに出迎えてくれた会長に紹介されたのが1人のおじさんだった。
阿久井一彦さん(59)と名乗ってくれた。世界戦に挑むユーリ阿久井の父。元プロボクサーで現在はトレーナーライセンスを得て指導する立場ながら日々、ジムワークを欠かさない。守安会長は「今も変わらず、スパーリングもやってますよ」と話す。
ジムは1987年(昭62)に会長が農地の一端に立ち上げた(現在は国道沿いに移転)。一彦さんは、その1期生という。フェザー級で30戦13勝(3KO)15敗2分け。世界王座どころか、日本タイトルに近づくこともできなかったが、ボクシングへの愛は深い。
ユーリ阿久井は小学3年から始めたサッカー少年だった。ボクシングを愛する父だが、息子に無理強いをすることはなかった。サッカーのDFとして活躍した息子だが、心の中ではボクシングへの思いを抱いていたという。「ボクシングをやりたい」思いを聞いた父は「本当にうれしかった」と振り返る。
すでに日本王座を獲得し「父超え」を果たした息子を「誇らしい」と話し、「政悟のパンチング理論は難しくてよく分からない。ただ、自分が持っているボクシングは一通り教えたつもり」と言う。
試合ではセコンドに付く予定だ。「父子鷹(だか)」で挑む世界戦。ユーリ阿久井は岡山県民、守安会長、そして父の思いを背負って、無敗の王者ダラキアンと対峙(たいじ)する。【実藤健一】


