春巡業中の9日、神奈川・藤沢市巡業で、アスファルトの上で熱心に弓を振る力士がいた。横綱白鵬の付け人で三段目の春日龍(31=春日山)は、この日が弓取り式デビュー。弓取り式を担当する力士は有事の際に備えて2人おり、以前務めていた同部屋の幕下水口(34)から交代することになった。

 取組終了後、最後に弓を持って土俵に上がり、弓取り式を行うことが役目。通常、横綱と同部屋の力士や付け人が務め、現在は主に日馬富士の付け人の序二段聡ノ富士(39=伊勢ケ浜)が担っている。すでに約3年間の経験があり、涼しい顔でこなす姿は貫禄十分だ。

 所作にはもちろん、意味がある。弓の中央を持って豪快に宙を切る動作は空気、両手で土を掘る動作は土俵の邪気を、それぞれ清めている。掘り起こした土俵を固めるため、最後に四股を踏む。これでお清めは完了だ。所作について聡ノ富士は「簡単ですよ」と笑うが、実はそうでもないらしい。

 巡業とはいえ、弓取り式が観客の視線を集めることに変わりはない。春日龍は直前まで練習したが「緊張します」と、顔はこわばり、出番よりかなり早く花道に現れるなど混乱。初挑戦では「間違えたー!」と反省しきりだった。その後、川崎市巡業、町田市巡業でも挑戦し「まだ慣れないです。次の巡業でも練習しようと思ってます」。ドヤ顔で引き揚げる姿を見るのが、楽しみだ。【桑原亮】