「全体的には良かった。(手つきが)白線よりちょっと前に出てる人もいたけど、まあまあかな。オレもホッとした」。初めて審判部長として幕内後半戦の審判長を務めた二所ノ関親方(59=元大関若嶋津)は、柔和な笑みの中に安堵(あんど)の表情も浮かべた。

 九州場所担当部長から2年ぶり復帰の審判部は、勝手知ったる部署。96年から14年間は委員、12年からの2年も副部長を歴任。現役時代の感覚と合わせた長年の経験から、白鵬のダメ押しにも自信を持って言う。「相手が土俵から出たのは経験からして分かるもの。それでダメ押しするなどオレの時代には絶対になかった。横綱には負けた相手に手を差し伸べるぐらいの気持ちがほしい」。

 場所前の力士会では「永遠のテーマ」と話す立ち合いや土俵上の所作を厳しく注意した。「確かに師匠がそうだった。理事長として研修会もやったよね」と振り返るのは、現役時代の師匠、二子山親方(元横綱初代若乃花)が掲げた土俵の充実。「何十年、何百年と続いている相撲を受け継いでいる。今の協会の安泰を後進にも引き継がせるためにも土俵の充実しかない」の熱意で目を光らせる。【渡辺佳彦】

 ◆二所ノ関六男(にしょのせき・むつお)元大関若嶋津。本名・日高六男。1957年(昭32)1月12日、鹿児島県中種子町生まれ。75年春場所初土俵。「南海の黒豹」の異名を取り82年九州場所後に大関昇進。87年名古屋場所途中で引退し「松ケ根」、14年12月から「二所ノ関」襲名。通算515勝330敗21休、優勝2回。