今年も、相撲担当がさまざまな角度から調べて、日刊スポーツが“勝手に”NO・1を決める年末恒例の「大相撲大賞」を紹介させていただきました。いかがだったでしょうか。

 中には、調べたけれども誰をどういう形で「NO・1」とするか、難しい記録もありました。その1つが「変化」関連でした。「逃げるは恥だが役に立つで賞」という名前ありきで調べようとしてみた、変化にまつわるデータを今回、いくつかご紹介します。

 立ち合いで「変わる」ことを変化と言うものの、跳ぶように大きく動くときもあれば、少しずれる程度もあります。どの程度からを「変化」とするか、主観によるところが大です。そこで今回は、たとえ相手に当たってからの動きだとしても、少しでもずれていた立ち合いを「変化」として調べました。

 すると、今年の幕内の土俵であった変化は33力士による計101回です。結果は74勝27敗。勝率7割3分3厘と、やはり高かったです。勝つ確率が高いから変化を選びたくなるのか、それとも相手を冷静に見定めて変化を選んでいるから勝率が高くなるのか。どちらでしょうね。

 力士別で、最も変化したのは蒼国来の10回(7勝3敗)。結果は7勝でした。5回以上変化した力士でみれば、最も勝率が高かったのは琴勇輝で5勝1敗。反対に複数回、変化した力士で最も勝率が悪かったのは松鳳山で1勝3敗でした。ちなみに、変化を選んで負けが上回ったのはほかに、北太樹と千代鳳がそれぞれ1度試みて敗れただけです。

 一方で、変化をされた43力士についても調べました。先ほどの裏返しで勝率が低くなるのは当然だとしても、複数回受けた力士で勝ち越しているのはなんと、2勝1敗の輝ただ1人でした。最も変化をされた力士は豊響で8回。2勝6敗と、負け数も最多です。続いて琴奨菊が7回(2勝5敗)と続きます。立ち合いで突進するタイプのこの2人が、変化される数が多いのは分かる気がします。

 ただ、3番目に多かったのは5回(1勝4敗)の魁聖。少し意外な感じがします。彼は猪突(ちょとつ)猛進型ではありません。でも、立ち合いをずらされて負けている。そこに、もしかしたら魁聖の弱点が見て取れるのかもしれません。

 変化については、いろいろな意見があるでしょう。選んだ力士によって、見え方も違うはずです。ただ、共通して言えることは、勝った力士をたたえるまでに一瞬の間ができてしまうことではないでしょうか。いい相撲だった、とは残念ながら言えません。それは、当人たちも分かっています。それでも勝ちたいと思うのも、力士です。生活が懸かっていますから。

 しかし、ある力士はこうも言いました。「変化して勝っても自分のファンは喜ばない。全力を出し切ってお客さんを喜ばせる相撲を取ることは、プロとして絶対やらないといけないこと」。変化をしない力士が偉いということは決してありませんが、今年1年間、幕内の土俵を努め続けた力士で、1度も変化を選ばなかった力士もあわせて、最後に紹介しておきます。

 九州場所の番付順で<1>横綱鶴竜<2>関脇隠岐の海<3>小結玉鷲<4>魁聖<5>正代<6>貴ノ岩<7>勢<8>逸ノ城。【今村健人】