昼下がりの場内が沸いた。二番出世披露後、十両土俵入りまでの31番のうち3番が物言いに。際どい勝負のたびに観客に協議の説明をしたのは、今場所2度目の審判長を務めた振分親方(元小結高見盛)だった。

 最初の2番は何とか説明をこなしたが、3番目の幕下琴太豪-千代嵐戦で混乱した。「両者の体(たい)が…」と言った後に詰まる。通常なら「落ちるのが同時と見て取り直しにします」と続けるところだが「が…と…ど……」と次の言葉が出てこない。向正面の錣山親方(元関脇寺尾)が「落ち着け」と言わんばかりに、両手を下げるポーズを取り、ようやく「土俵の外に出ており取り直しにします」という表現で終えた。

 休場の陣幕親方(元前頭富士乃真)の代役として、今場所は同じ高砂一門から急きょ審判を任された振分親方。場内は「しっかりしゃべれ~」とヤジも飛ぶ中、必死に説明しようとする姿勢に生真面目な人柄がにじみ「高見盛~」という励ましもあって笑いが生まれ、和んだムードに。本人は「先輩方に話し方を教えてもらってるけど、今日は50点。細かく話せなかった」。花形の審判は責任も大きいだけに素直に反省したが、何をしても注目される独特の存在感は親方になっても健在だ。【木村有三】