先月は熊本地震から1年の節目だった。いや、「区切り目」を意味する節目という言葉は、適切ではない。被災し、いまだ立ち直れていない人はまだ、数多くいる。復旧、復興できていない地域も多い。現場に節目はない。そもそも、被災者であろうとなかろうと、節目なんて誰にも、いつになっても、訪れるものではないのかもしれない。

 だから、十両天風(25=尾車)が2月に熊本城の「復興城主」に一口、加入したと聞いたとき、いいなと思った。そして彼は、3月の春場所後にプライベートで熊本を観光に訪れた。

 「熊本が好きで、城をめぐるのも好き。でも、熊本城には行ったことがなかった。みんなが復興に向けて一生懸命、寄付している状況の城を目に焼き付けておかないとと思った。せっかく城主になったので、見ておかないと申し訳ないですしね。観光と、反省を込めて行きました」

 思えば1年前。日本相撲協会や力士は各巡業地や両国国技館で、募金活動を行ってきた。九州出身の力士が中心となって実施したが、その中で持ち前の明るさで先頭に立って募金箱を持ち、声を張っていたのは香川県出身の天風だった。

 「地元ではないですけど、自分の地元がこうなったらと考えると…。だから、助け合うことは当たり前だと思っている。見に行って良かったですよ。まだガタガタで全然、撤去できていない道もあった。お城もだいぶ崩れていた。ひどい部分がいっぱいあった。でも、それに負けない皆さんの頑張りやぬくもりがあった。その力は全然、落ちていない。そんな雰囲気を感じました」

 日頃からおしゃべり好きで、並外れて明るい性格。そして、関取最重量の208キロの体形から、ゆるキャラのような扱いを受ける天風だが、そんな一面も持っている。

 あ、もちろん、熊本旅行の楽しみは「馬刺しと、あか牛がかなりおいしかった」と、食べ物だったことは言うまでもない。【今村健人】