審判部によると、初めて適用されたケースだったという。序二段の安西-武士で取組続行不可能と判断され、取り直しを取ることができず不戦敗になる場面があった。日本相撲協会は1月の初場所後に審判規則を一部変更し「審判委員は、力士の立ち合いが成立する前に、相撲が取れる状態ではないと認めた場合には、協議の上で当該力士を不戦敗とすることができる」との項目を追加していた。

際どい一番は物言いがついたが、左膝を痛めた武士は土俵下に下りるのも一苦労だった。審判団は協議を行い、ビデオ係から同体の連絡を受けると、玉ノ井親方(元大関栃東)が武士に何度か話しかけて状態を確認。2分20秒の協議の末、時津風審判長(元前頭土佐豊)は場内アナウンスで「西方力士(武士)の膝が悪く、取り直しができないと判断」と説明し、東方の安西が不戦勝となった。

同じく審判を務めた片男波親方(元関脇玉春日)によると、同日中に伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士)に同取組での事象を報告したという。取組中のアクシデントは避けられない部分がある。力士の安全面を最優先に、取組を進めていく。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

武士と安西との一番で物言いが付き協議する審判団(撮影・鈴木正人)
武士と安西との一番で物言いが付き協議する審判団(撮影・鈴木正人)