時乃平を寄り切りで破り土俵を引き揚げる熱海富士(撮影・鈴木正人)
時乃平を寄り切りで破り土俵を引き揚げる熱海富士(撮影・鈴木正人)

18歳のホープが、災害に見舞われた故郷に思いをはせて奮闘している。静岡県熱海市出身の西幕下55枚目、熱海富士(18=伊勢ケ浜)が、初めての幕下挑戦で1番相撲から2連勝とした。高校相撲の強豪校、静岡・飛龍高を経て昨年11月場所初土俵。序ノ口、序二段で優勝するなど、順調に番付を上げている期待の若手は、3日に熱海市で起きた豪雨被害に胸を痛めた。

土石流被害があった伊豆山地区は、実家から車で10分ほどの距離にあるという。「稽古が終わって兄弟子から『熱海、大丈夫か?』と言われてすぐに携帯を見ました。自分の知り合いは無事だったけど、行方不明や身元の分からない人がいるので…」。

地元の知人には、すぐに安否確認も兼ねて連絡した。小学校時代の担任教師らが、逆に励ましのメッセージをくれたことがうれしかったという。しこ名に「熱海」が入っている現役力士は自身だけ。兄弟子の大関照ノ富士にあこがれる大器は「熱海の代表といったら“顔じゃない”けど、熱海の人が誇れるような力士になりたい」。人なつっこい笑顔が特徴的だが、覚悟を込めた言葉は力強かった。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

熱海富士(右)は時乃平を寄り切る(撮影・渦原淳)
熱海富士(右)は時乃平を寄り切る(撮影・渦原淳)