力士は気は優しくて、力持ち-。まさにその言葉を体現する、あっぱれな救出劇が場所前に起こった。

11月11日。稽古休みだった立浪部屋の幕下北大地(24)と三段目筑波山(20)は、部屋の関取衆の明け荷を会場の福岡国際センターに運びに行った。その帰り道。トレーナーが運転する車に乗って山中を走っていると、対向車線に1台の軽ワゴン車が止まっていた。周囲に複数の人がおり、異変を察知。左前輪が側溝にハマって脱輪し、運転手らが立ち往生していた。

車を降りて助けにいった。北大地とトレーナーが脱輪した左前輪側から車体を持ち上げると、ふわっと浮き上がる約900キロの軽ワゴン車。右前輪側についた筑波山も合わせて持ち上げ、手前に引いて車体をずらす。ものの1分での救出劇。ささやかながら山中に歓声と拍手が沸き起こった。

負傷する可能性もゼロではなかった。それでも両力士は「迷いはなかった」と口をそろえた。北大地が「稽古の方がしんどいです」と話せば、筑波山は「すごく軽かったっすよ」と涼しい顔。ともに一番相撲で黒星発進となったが、きっと相撲の神様は見ている。【佐々木隆史】

大相撲九州場所 初日 透輝の里(左)を攻める筑波山(2022年11月13日撮影)
大相撲九州場所 初日 透輝の里(左)を攻める筑波山(2022年11月13日撮影)