王者の尾川堅一(29=帝拳)が、挑戦者で同級1位杉田聖(27=奈良)を2-0の判定勝ちで下し、4度目の防衛に成功した。昨年4月以来の再戦は互いに目上を切る流血戦。前半はジャッジの1人が挑戦者に3ポイントのリードを与えるほどの苦戦だったが、後半からは手数が増え、要所で強烈な右ストレートをたたき込んで挽回した。苦しんでの判定勝利に「初戦も苦戦。今日も苦戦。成長がない。悔しい」と、倒しきれないもどかしさを、試合後のリング上で漏らした。

 2歳で父が主宰する道場で日本拳法を始めた。小学時代に全国優勝、明大ではインカレ団体制覇。「拳だけで戦うボクシングでやりたい」と自信を胸に22歳でプロデビューを飾る。以来、拳法とボクシングの融合を目指す。拳法では右の一撃必殺が売りだった。勝利の9割はパンチ一閃(いっせん)。「神の左」と言われる山中のように「自分は“神の右”と呼ばれたい」と話す。

 課題も残ったが、この日も「神の右」を何度もさく裂させた。「30歳で世界王者になれるように、与えられた試合を良い形で勝っていきたい」。拳法出身では渡辺二郎以来の世界王者は、そう遠くない。