ボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチで日本記録に並ぶ13度目の防衛に4回TKO負けで失敗した前王者山中慎介(34=帝拳)が16日、京都市内で会見し、進退を保留した。敗戦から一夜明け、勝利した場合でも、満足いく内容であれば引退を考えていたと明かすなど、複雑な胸中を吐露。タオル投入の時期をめぐる議論には自分の責任だとして幕を引いた。今後、本田明彦会長は山中の決定を優先し、現役続行の場合はタイトルを奪われた王者ルイス・ネリ(メキシコ)との次戦での再戦交渉に入る方針を示した。

 5年9カ月守り抜いた緑のベルトが目の前にはなかった。傷のない、きれいな顔で会見場に姿を見せた山中は、言葉を選びながらゆっくりと胸の内を語った。30戦目でのプロ初黒星。34歳。前夜、明け方まで話し合った沙也乃夫人(31)からは「後悔のないようにしてほしい」とだけ言われた。注目の進退について質問が飛ぶと、下を向き、考えをまとめてから答えた。

 「何カ月も引っ張ることはないが、大事なことなので落ち着いて考えたい。長くないうちに決めたい」

 会見の最後には「納得のいく勝ち方が出来れば、それ(引退)でもいいのかなと思っていた」と、勝利しても引退する可能性があったと明かした。強い決意を持って上がったリング。それだけに、燃え尽きたと思えない感情が一夜明けても気持ちを揺るがせた。