東京都港区赤坂、1947年(昭22)開館の伝統ある明治記念館の一室に、怒声が飛び交った。来年1月4日に東京ドームで行われる新日本プロレスのIWGP・USヘビー級王座戦の会見に用意された記者会見は、報復、反撃、最後通告と2人の男の怒りが混じり合う壮絶な乱闘現場と化した。

 王者ケニー・オメガ(34)がまずは1人で登壇した。事前に席は2つ用意されていたが、直前に再セッティングがなされて1つに。これはおそらく前日11日の福岡大会の流れを受けてだったのだろう。前夜、挑戦者でWWEの伝説的スーパースターのクリス・ジェリコ(47)が突如リングに現れ、試合を終えた直後のオメガを急襲。ベルトで頭部を痛打して流血KOに追い込んでいた。その翌日。2人を居合わせたら混乱は必至。そのために時間をずらしての会見となったとみられる。

 頭に白い包帯を巻いて登場したオメガの会見は滞りなく進んだ。

 「彼はすばらしいレッスンを、自分に授けてくれた。我々はプロレスラーであり、アーティストである。ということを踏まえて、私自身、ここまでファンに楽しんでもらう試合にかたよる傾向があったと思う。五つ星ではなく、六つ星の試合を展開しようということを、自分で頭の中に置いて試合をしていることが多かったと思う。でも、彼は教えてくれた。プロレスとは、真の闘いであることを」。

 痛恨の前夜を客観的に振り返り、打倒ジェリコへの闘志を内にたぎらせていると思えたのだが…。

 事態はその後に続いたジェリコの会見で起こった。冒頭のコメントに続いて質疑応答の最初の質問への答えを口にし始めたときだった。「ドリームマッチと…」。その瞬間、会見場の後方から白い巨体がジェリコに向かって猛突進した。オメガ。ボディープレスで壇上の挑戦者に襲いかかると、そのまま馬乗りで顔面に拳を何発も振り下ろす。周囲があっけにとられる中、外道らがなんとかオメガを制止してひきはがすと、今度はジェリコが反撃。テーブルを投げつけて逆に馬乗りになり、ナックルパートを打ち下ろし続けた。なんとか他レスラーによって2人は分けられたが、ジェリコは「カモン!!サノバビッチ!!」と怒り心頭。オメガが会見場を去ると、司会者のマイクをぶんどって、一気にまくし立てた。

 「いいか? この試合は新日本プロレスがいままでには見たことがないような試合になる。五ツ星の試合、もしくは七ツ星の試合にはならない! 数えきれないほどのフィニッシュシーンの繰り返し、そして真の闘い。戦争だ! 自分自身、もう日本には何度も来ているが、東京ドームの試合が自分のキャリアとして最高、最大の試合になる。歴史に残る最強のファイターだということをここで証明してみせる! だから絶対にまばたきせず、この試合を観てくれ! こんな試合、もう2度とないぞ!」

 肩を震わせて、顔を紅潮させながら宣言した。

 さらにマイクをぶん投げて会見場を後にする際には、席に座っていた本紙記者のノートとペンを強奪。「 Omega Last Match」などと書き殴って、「ケニー・オメガはここで終わりだ!」とアピールして見せた。最後にはノートを引きちぎって紙の雨を降らせて、威嚇するように記者陣を見渡して去った。

 なお、2人の戦いはダブルメインイベントとして行われることがこの日発表された。